すいかさんのブログでこの前、お子さんが熱に浮かされた際に出た寝言のエピソードが紹介されておりましたが、私が今まで聞いた寝言の中で一番衝撃的だったのは中学校の修学旅行中に友人が発した、「もう眠いよぉ(ノД`)~゜」という寝言でした。っていうか既に寝てんのに夢の中でも寝足りなかったのか彼は。
・スペースX、衛星打ち上げ成功 ロケット洋上着陸はまた失敗(AFP)
大体今年一月くらいからですが、米国のロケット打ち上げ事業を行うスペースXという会社の各種実験に関する報道が日本でも見られるようになりました。上記ニュースは中身を見てもらえば早いですが、これまで打ち上げた後はそのまま廃棄していたロケットを再利用できるよう海上に着陸させようという実験を報じたもので、今回は衛星を打ち上げることが本目的であって海上着陸は二の次のデータ取得が目的だということであったことからCEOのイーロン・マスク氏は、「計画通りの失敗だ」と述べています。
ちなみに、スペースXは地上への着陸には既に成功しています。またついでに述べるとこのスペースXは、衛星や補給物資を積んだロケットを実際に打ち上げ続けている世界でも数少ない民間企業の一つで、もう何年も前から商業ベースの依頼を受けて衛星を宇宙軌道に乗っけたり、国際宇宙ステーションに補給物資とかを送ってたりします。
そんなスペースXを率いているCEOというのが上記のイーロン・マスク氏です。恐らく日本ならスペースXはおろかこの人の名前を聞いてもピンとこない人の方が多いかと思いますが、このマスク氏が電気自動車(EV)の開発・販売で一時はトヨタとも技術提携したテスラモーターズのCEOでもあると聞けばその印象も変わってくるのではないでしょうか。
・イーロン・マスク(Wikipedia)
イーロン・マスク氏は米国系移民の息子として南アフリカ共和国で生まれ、青年期までこの地で育ちました。マスク氏は少年期から一風変わった子供だと周囲から見られており、一旦集中すると揺すっても声をかけても全く反応をしなかったり、一読した本の内容を隅から隅まで暗記しているなど際立った秀才ぶりを見せていたそうです。ただ子供の頃は大人しい性格をしておりクラス内でも特別目立つ人物でもなければ、ガラの悪いグループに絡まれていじめられることもあったと本人も語っています。
マスク氏は高校卒業とともに最初はカナダ、次いで米国本土の大学へ留学しますが、留学の理由としては当時南アフリカ共和国で敷かれていたアパルトヘイト政策への反発と徴兵への忌避、そして現在も絶縁している父親から離れようとしたことが動機だったそうです。留学先の大学はいくつか転々としておりますが学生期にはプログラミングや経営学を学んだとしているものの、この時期の彼については学歴ロンダリング、または学歴詐称の指摘も出ておりはっきりとした足跡の裏付けは取れてはいません。ただ後からやってきた弟ともに学生時代から当時発達し始めてきたIT系の分野に興味を持ち、大学卒業後はIT会社にインターンとして入社しました。
彼の最初の転機は弟とともに始めた事業で、今でいうマッピング広告と呼ぶようなサービスで地元の商店街を中心にネット上で地図と店の紹介を行うというサービスを展開しました。IT黎明期ということもありましたがこの事業はそこそこ成功していくらかの資金を獲得するにも成功しましたが、このマッピング広告事業からはすぐに足を洗って今度はかねてから構想を抱いていたネットバンク事業へと挑戦します。
今でこそネット決済は当たり前ですが1990年代はネット上でお金のやり取りをするなんてセキュリティ面で危ないのではという認識が強い中、必ずネットで決済する時代が来ると踏んでいたマスク氏は培った人脈から事業運営に必要な人材を集め、手持ちの資金を大々的に活用するとともに米国内で銀行事業免許を取得し、当時としては本格的なネットバンクを設立するに至ります。ただ当時には同じような事業モデルを展開する競合他社もおり、お互い熾烈な競争を繰り広げた後で最終的には手を組み、ネームバリューとブランド力の高かった提携相手側の名称を使って成立したのがペイパル社(PayPal)だったりします。知ってる人には早いですが、ペイパルは今もネット決済サービスで世界最大手の会社です。
ペイパルが成立した後ほどなくして米国でITバブルが弾けますがこの逆境下でもマスク氏は慌てて身売りはせず、時期をしっかり見計らった上で株式上場を果たして巨額の富を得ます。大体この頃から数多いる米国のIT長者の中でも一際キャラが立っているというか一目置かれる存在とみられ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズに続く第三の男という風に取り上げられるようになったそうです。
なお彼を知る人物からの評でも、「ビル・ゲイツのビジネス的なえげつなさとスティーブ・ジョブズのエキセントリックな偏屈さを兼ね合わせた男」と比較されていますが、なんていうか本当に嫌な組み合わせだなぁ。
話は戻りますがペイパル上場によって巨万の富を得たマスク氏が次に手を出したのが、ロケット打ち上げ事業を手掛けるスペースXと、電気自動車(EV)の開発及び販売を手掛けるテスラモーターズでした。信じられないかもしれませんがマスク氏はロケットとEVという二種類の最先端の技術分野の開発・事業化をほぼ同時期にスタートさせており、現在も両社のCEOを兼任しながら同時並行で仕事を進めております。
既に書いている通りにマスク氏は元々IT分野からの出身者でありますが宇宙開発や自動車には昔から興味があり、ペイパルを売却して開発者との会合に出ていくうちに物凄い勉強し始め、現在においては両分野共に第一線の研究者にも負けないほどの知識を持つに至ったそうです。そのため社内の開発者が技術トラブルなどの原因や対策を説明する際に少しでも穴があったら的確にそこを突いてくるので、社員としてはやり辛い上司らしいです。
両事業共にペイパルと比べ技術的な障害も多いだけでなく資金調達面でも何度も危機にさらされ多くの人間が失敗すると予想していましたが、結果的にはどちらも見事収益化に成功しており、また技術的にこちらも難しそうなハイパーループという超高速鉄道事業にも手を出すとマスク氏は宣言してます。
以上のようにマスク氏は経営者としてその実績は超一流で、なおかつ最先端のテクノロジー開発に自ら取り組みチームを指揮することからも超一流の技術者であります。そうした背景から映画「アイアンマン」の主役でロバート・ダウニーJr氏が演じたトニー・スタークは彼がモデルだと言われ、本人もその気というかそう言われてうれしかったようで社内に等身大のアイアンマン人形を置いているそうです。
実際に彼の評伝を読んでいるとトニー・スタークに近い印象を受け、その能力と決断力は傑出しているものの人間性に問題があるというか、苦しい時期を乗り越えてきた仲間と何度も衝突して袂を分かったり、ちょっとでも気に入らないと部下をこき下ろしたり、こちらも「アイアンマン」に出てくる優秀な秘書のペッパー・ボッツに擬せられるほど優秀だった自分の秘書をある日突然解雇したりと、非常に独善的で必要以上に自信家である印象を覚えます。ただそんな彼に対する米国の人々の注目は小さくなく、米国経済を引っ張っている一人であるというのは間違いない事実です。
今回こうして紹介記事を書こうと思ったのは、彼ほど米国、ひいては世界に影響を与える企業経営者は決して多くはない上、テスラモーターズの社名は日本でもよく報じられている一方、「イーロン・マスク」という個人名が何故日本では浸透していないのか、この点に疑問を感じたからです。文字通り世界を動かす経営者であるのだからもっと注目されたり紹介されてもいいと思えるのに、何故かこういう情報は出回りません。
はっきり言えば世界に対する目が日本のメディアに不足しているように思え、この点に対して自分を含め日本のマスコミ連中がほざく「グローバルな目」というものを養わなければならないと自戒を込めて書くことにしました。ちなみに、自分もマスク氏を知ったのは友人に「最近読んだ本で一番これが面白かったから」と、下記の本を教えてもらったことがきっかけです。
4 件のコメント:
イーロン・マスク氏の人生は山あり谷あり、冒険に満ちていますが、1971年生まれで、同じ時代をこのように大きな夢を抱いて生きている人もいるのだな、と。そしてその冒険が現在進行形であり、これからの活躍も楽しみです。
グローバルな視点を提供するという意味でのイーロン・マスク氏の紹介の前振りに、なぜ私の子供の寝言を綴った記事が紹介してあるのか?はわかりませんが(「眠いよ~」も面白いですね)、素晴らしい人物の紹介ありがとうございました。
一個人としても間違いなく見ていて面白いと感じる人物です。しかも社会への影響度も半端なく大きいというのに何故だか日本ではこの人の紹介が少なく、恐らくすいかさんだけでなく大半の方はこの記事読んで初めて知った方が多いでしょう。なんていうか勿体ない。
>素晴らしい人物の紹介ありがとうございました。
この一文を最初読んだ時、寝言言った私の友人を指しているのかとリアルに誤読しました。すいかさんの記事を読んで彼のことを思い出したため引用したのですが、この同級生は中二のバレンタインデーに私手作りのチョコレートを靴箱に放り込んでおいたら狂喜して持ち帰るなど、ネタ的に素晴らしい人物であったことには間違いありません。
そういえば中国でもテスラに似た電気自動車メーカーが出たようですね。創業者の沈海寅は日本でも幾つか起業をした人らしいです。
用小米模式做“中国特斯拉”?沈海寅至少把奇点电动车开上来了
http://auto.sohu.com/20160313/n440243443.shtml
ざっと調べてみたところ、どうやらこの人物はキングソフトとJwordの立ち上げに関わっていますね。日本滞在はそこそこの年数で、この期間の実績もよくアピールしているようです。
このニュースは知らなかったのですが、内容としてはテスラのようにIT技術者を中心にEVメーカーを起ち上げる。小米やアップルのように、自社工場を持たずにEMSで生産をするというプレゼンをしたようです。EVの量産まではたぶん行けるでしょうが、果たしてそこからブランドイメージを持てるかがこの人の腕がわかる所でしょう。
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