昔私が中学生だった頃、十字軍を舞台にした小説を書こうと思い立って学校の図書館から中世世界史の本を数冊借りてきて、うちにある歴史資料集と合わせて大体四冊くらいの本を並べてあれこれ事実関係の確認などを行いました。さすがに四冊もあると各資料の中で足りない部分が相互に補われて大体の内容を掴むことができたのですが、ふとこの時に思うことがありました。
たとえば「十字軍」という調べものに対してはこうして資料を並び立てることができるけど、毎回資料や記事がこう並びたてられる保障はないし、下手をしたら一回テレビかなんかで報道されてそれっきりという情報もある。そんな場合、今みたいに調査、研究するときにはどうすればいいのだろうか。
こうして考えた末に出た結論と言うのが、どんな情報でも一回触れた時点で暗記するしかないという境地でした。
基本的に情報を分析、研究するには、一つの情報を鵜呑みにせずに関連する情報同士を比較することが絶対条件です。しかし関連する情報というのは必ずしも先ほどの十字軍のようにそのテーマごとに本にまとめられていたり、ネット上でデータベース化されているわけでもありません。そのため比較する際には基本的に収集という作業が必要になるのですが、これも時間がとられるし、そもそも収集できる資料すらないということもあります。また資料があるとしても、大まかな目星なしに見つけるというのも難しいというものです。
ではどうすればいいか。その解決方法として唯一浮かんだのが、私の場合暗記でした。どんな情報、たとえどれだけ些細なものといえども一回見聞きして暗記すればいざ分析が必要になったり、後で関連する事件が起きて重要度が増した際に一発で脳内で引き出すことができます。また研究対象に関する大量の資料が実際にあるとしても、数学みたいに数式を作って比較検討(データ化しての比較はあるけど)できるわけでなく、一旦自分の頭に入れて租借しないと、新しい理論や考え方などは浮かぶはずがありません。
こういう風に考えるに至り、それ以降私は本当にどんなことでも暗記しようと心がけてきました。もちろん全部が全部暗記できるというわけではありませんが、それでも知人らからよく私の記憶力(知識力)が評価されるのは、こうした日頃の心がけの賜物だと思います。
こう改めて説明した上で私の他の記事を読み返してもらえばわかると思いますが、基本的に私の得意とする解説は一つの情報に対して別の関連する情報をさらに紹介し、両者を複合させて私の考え(新たな情報)を紹介するという形式が非常に多いです。私なんて変なプライド持っているもんですから、一つの事実をただ単に紹介するだけなら伝書鳩でもできると思って、最低限関連する情報を紹介するようにしております。ちなみに、こういった作業を私は私的に「情報を加工する」と呼んでいます。
なのでこれは他の人に言いたいことですが、よく丸暗記は官僚的で応用の利かない思考になってしまうなどと批判する人もいますが、私は最低限の知識を暗記して土台を作らねばそもそも人間は思考することができないと考えています。その土台は大きければ大きいほどもちろんよく、むしろ官僚的と呼ばれる方々のほうこそ暗記している知識が少ないのではないかと疑っています。
私の友人の中でも自分に興味のない話題となると一応会話はするもののあまり深く聞かずに相槌だけ打つ人間もいますが、どれだけ自分に関係なさそうな情報でも、私は暗記するに越したことはないと思います。人間の記憶力はパソコンみたいに容量が決まっているわけじゃなく、鍛えようと思えば鍛えられるものなのですから、一語一句暗記する勢いくらいが思考にとっても返ってよいのです。
おまけ
昔読んだ話で、ある日本人が外人が円周率を小数点第千位まで暗記して見せたというニュースを聞き、じゃあ私は一万位までやろうと思い立って本当に実行してしまいました。この人は二十歳を過ぎた頃に記憶力の減退を感じ、それ以降ずっと鍛えていたそうで、確かその暗記をやってのけた頃には四十歳を過ぎていたと思います。
よく年齢が重なると身体的に記憶力が落ちるといいますが、私はそれは嘘で、それまでより記憶する量が減るために起こることだと思います。なお、先ほどの円周率暗記の世界チャンピオンは確か去年か一昨年に事故の世界記録を塗り替えるために五万位までの暗記をやろうとしましたが、たしかこっちは途中で棄権していたと思います。
2 件のコメント:
なるほど、納得です。
暗記するコツなんかはありますか?
花園さんはどういう風に暗記していますか?
うん、せっかくだからその質問の回答は記事に書くね。本来ならまとめておくべき内容だし。
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