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2009年8月8日土曜日

外国人研修制度について

 今朝の朝日新聞に、自分がここ数年で最も起こってほしくないと願っていた事件の報道がついにありました。

中国人実習生、初の過労死申請 残業最大180時間(asahi.com)

 まず最初に、外国人研修制度とその現状について説明いたします。
 外国人研修制度とはその名の通りに日本の進んだ技術を学ぼうとする研修生を主に発展途上国より募り、日本の農業や工業の現場で働きながら直にその技術を教えるという制度の事を指します。この制度は言うまでもなく国際貢献の一環として設けられた制度なのですが、リンクに貼ったウィキペディアの記事にもあるとおりはっきり言ってここ十年間は完全に形骸化した制度となっており、かねてより私はこの制度を直ちに廃止しなければと考えておりました。

 具体的にこの制度のどこに問題があるかですが、近年この制度は技術を外国人研修生に教えるという名の下に体のいい労働移民制度となっていたからです。というのも外国人研修生にはその働きながら学ぶという目的上一定の賃金が支払われることとなるのですが、その賃金額は日本の法律上で定められている最低賃金を下回ってもよいということになっておりました。そのため不道徳な一部の経営者は安価な労働力を得るためにこの制度を利用して大量の外国人を雇い、文字通り馬車馬のように働かせては安い賃金しか支払ってこなかったのです。

 もちろん日本にやってくる外国人研修生、主に中国人は安い賃金だと分かっていても日中の通貨格差ゆえにこの制度に応募して来られるのですが、たとえ同じ労働をしたとしても日本人と外国人で受け取る賃金が違うなど明らかな人種差別です。そしてそれがまだ立派な技術を教えるのならともかく、実態的にはそうした研修という目的がほとんど果たされないまま単純労働の現場などで働かされている例が大半だそうです。

 また日本の側としてもそのような過重労働を嫌う労働者が増えてきていることから、この制度を利用しなければ経営が成り立たないとはっきりと言う事業者もおります。これは二年前のテレビの報道でしたが、長野県のある高原野菜農家でもこの制度を利用して大量の中国人を雇って毎年の農繁期の作業を行っており、インタビューでは以前は大学生のアルバイトが大量に来てくれたが今では国内だと誰も募集に応じず、この制度がなければ農繁期を越せないと洩らしておりました。このように非常に皮肉な話ですが、日本は輸入野菜にとどまらず国産野菜の生産においても中国にすでにかなりの面で依存している状態なのです。
 なおこの農家ではしっかりと定時を守って外国人研修生と働いておりましたが、研修生の側からするともっとお金を稼ぎたくて出来れば残業がしたいという方もおりました。

 この頃、私が夜中に居酒屋などに行くとアルバイトの多くが中国や韓国の留学生で占められている店をよく見かけます。実際に私が在学中だった頃に知り合った留学生らはその日本の物価の高さゆえに、仕送りだけに頼らず昼は授業に出て夜にはバイトに行って日々の生計を立てている者が数多くおりました。聞くところによると居酒屋の方でも深夜のアルバイトはきついとこの頃はフリーターなどからも敬遠されており、一般のアルバイト先に働きづらい外国人留学生くらいしか来てくれなくなっているそうです。
 私が見てきた外国人留学生はみんなそのような環境下でも、はっきり言って日本の学生よりずっと真面目に勉強している方ばかりでした。チリからの留学生に至っては卒業後にすぐに帰国するのかと聞いたら、「帰国費用をまず貯めないといけない」と言われてぐっと心が痛みました。

 今回、一番最初にリンクに貼ったニュースでは、就寝中に息を引き取った中国からの外国人研修生の方に初めて過労死が申請されたということが報じられております。本来、外国人研修生には残業時間に制限があるにもかかわらずこの亡くなられた方は多い月には180時間も残業を行っており、家族にもそのせいで疲れると電話で洩らしていたそうです。異国の地で、しかも家族を残して亡くなったこの方の無念を思うと非常にやりきれない思いがするとともに、同じ日本人として心から申し訳なく思います。
 同じ記事によると去年一年間の外国人研修生の死亡件数は34人で、そのうち過労死の線が高い心臓発作などが原因の方は16人もおられ、今回の件がたまたま起こったわけではないと見てほぼ間違いないでしょう。

 この外国人研修生といい先ほどの外国人留学生の深夜アルバイトの増加といい、すでに日本は他の移民国家同様にきつい労働の一端を外国人に担わせていると私は見ております。しかも賃金は大抵は日本人より一段下に置かれている状態で、これで日本が彼らに恨まれたとしても私は何の言葉も返せません。
 現在のところ日本では外国人の移民が政策問題として話題に上がるだけで肯定派の政治家が激しく攻撃され、また外国人の地方参政権一つとっても私の記事のように議論一つ許さないといわんばかりに批判する方もおります。

 特に一番ひどいと思うのが、中国人や韓国人全員がまるで犯罪者だと言わんばかりの主張をする方です。よくそういう方は日本人と比べて外国人は犯罪率が高いといいますが、これははっきりと私も断言できますが、長期滞在の外国人登録者数とスポット来日の外国人の合計を表す正確な統計は今のところ全くなく、外国人の犯罪率が高いということを示せるような信用に足る母数データは全くありません。また仮に外国人に犯罪が多いとしても、過労死するまでに低賃金で働かされている方たちも「犯罪をよく犯す外国人」という同列で語られるのは個人的に非常に残念です。

 私が外国人の地方参政権に賛成なのもここにあります。こうした明らかに劣悪な環境下で働かされ続けているという事実を少しでも声にのせるために、表にするために、何が必要かといったらやっぱり地方参政権ではないかと考えるわけです。

 最後に、この度過労死が申請されている蒋暁東氏に心からご冥福をお祈りします。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 外国人に対する日本の制度は厳しいものばかりですね。 どうしても、外国人は無理をさせられてしまうので、制度を変えてもらいたいですね。 残業の規制をすればいいと思うんですけど、通貨価値の違いなどいろいろと問題はありそうですね。

花園祐 さんのコメント...

 残業の規制は現在でもあることはあるのですが、働きに来る中国人の中にはいくらでも残業をしてでもたくさんのお金を母国に持って帰りたいと言う方もおり、一律に取り締まって実行するのは難しいでしょう。ただ労働基準については同じ日本人でも、私の友人なんか一ヶ月の残業が200時間いったとか言っており、法律どうこう以前に実効性を高めることが先決だと考えております。