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2010年1月3日日曜日

センスのいいニックネーム集~プロ野球選手編

 もう大分昔に私が中学生だった頃、図書館にてそれまでに世の中に浸透したニックネームを集めた本がありました。そこで紹介されている人物はそれこそ戦前から現代に至るまで様々な世代が集められており、今ほど近い過去の人物を知らなかった私には非常に面白がって読んだのを今でも憶えております。
 その本の作者は前書きにて、各個人を一言で言い表すニックネームを作る作業というのは非常に高度なセンスを要求される作業であって、それだけあって未だに語り継がれるニックネームというのは一つの単語としても高い評価に値すると述べていたのですが、その本が発売されたのは97年でしたが、近年は珠玉ともいえるニックネームがほとんど出る事がなくなり、日本人の日本語能力の低下の一面なのかもしれないという嘆きにも似た言葉も付け加えられていました。

 その本が出てからすでに十年以上経ちましたが、果たして作者の言う通りに近年はこれというニックネームもなければ流行語すらもほとんど出回らなくなってきてしまいました。こうした現象を日本人の日本語離れと言うのは簡単ですが、私はこれらの原因ははっきり言って世の中の世相を見事に言い表す事の出来ない、各記者の質の低下が何よりも大きいかと考えております。まぁそういう私も文句を言うだけというのは恥ずかしい事なのですが。

 そこで本日は、これまで世の中に出てきた見事なニックネームをいくつか参考までに紹介しようと思います。実は前々から準備をしてきていたのですが、一挙にまとめてバラバラに紹介してもしょうがないので、今日はプロ野球選手に限って紹介しようと思います。 

 前もって断っておきますが、私自身がそれほどプロ野球に造詣が深いわけでもなく、またどうしても贔屓球団に偏ってしまう傾向は否めないので、「どうしてこいつは紹介しないんだ(゚Д゚#) ゴルァ」という気持ちは抑えて読んでいただけたらと思います。もちろん「この選手にはこういうニックネームがあったよ(´∀`)」というのであれば、それをコメント欄に書いていただければ幸いです。

1、七色の変化球 大野豊
 今回ニックネームをまとめようと考えるきっかけとなった人物で、リンクに貼ったウィキペディアの記事を見てもらえばわかるとおりに現役時代は多彩な変化球を武器にカープの黄金時代を支えた大投手の一人です。その活躍もさることながら実働22年という現役期間は驚愕の一言に尽きます。なおウィキペディアによると、元巨人の松井秀喜選手は大野選手がやめると聞いて心底ほっとしたそうです。

2、精密機械 北別府学
 しばらく広島カープが続きますが、こちらもまたセンスの光るニックネームです。大野選手同様にカープ黄金期に主に先発として活躍した投手で、その名の表す通りにとにもかくにもずば抜けたコントロールを持っており、現役選手ですらなかなか達成できていなかったテレビ番組「筋肉番付」の企画、「ストラックアウト」をコーチ時代に見事パーフェクトを達成しています。

3、炎のストッパー 津田恒美
 こちらも広島黄金期に活躍したストッパーの津田選手です。現在でこそストレートが持ち味のストッパーとなると阪神の藤川球児選手が有名ですが、こちらの津田選手も凄まじいストレートを持っていたようで、なんでも現巨人の原監督が津田選手のストレートをファウルした際に左手の骨を骨折して、残りのシーズンを棒に振ったというエピソードがあります。
 しかしそれ以上に津田選手のこのニックネームに重みを持たせているのは、彼が脳腫瘍によりわずか32歳にて世に去ったという事実が強く、現に彼のこの経歴は未だに広島ファンの間で語り継がれていると聞いております。

4、グラウンドの詐欺師 達川光男
 上記広島黄金期の錚々たる投手陣を率いていたキャッチャーというのも、エピソードに事欠かないこの達川選手です。この彼のニックネームの由来は野村克也元楽天監督ばりの打者に対して話しかけることで集中を妨げる「ささやき戦術」と、ボールが当たってもいないに関わらずデットボールを受けたフリをするというまさに詐欺師という名に相応しいまでのトリッキーなプレイから来ています。
 しかしその詐欺師という呼び名の一方で広島の投手陣らからの信頼は厚く、現に現役時代の打率などといった成績は他の名捕手と比べても芳しいものでないながらも、長らく第一線で活躍したというのは彼の親しみやすい人格や求心力にあったかと思われます。

5、優勝請負人 江夏豊
 日本プロ野球史上最強の投手との呼び声の高い江夏選手ですが、渡り歩く各球団で優勝の原動力となった事からこのニックネームとなりました。現在このニックネームは同じく複数の球団で優勝を達成している工藤公康選手にも使われる事がありますが、私の中ではやはり江夏選手のマウンドでの圧倒的存在感と信頼感からこの名前と来たら彼しか浮かびません。
 因みにウィキペディアで調べてみると、先程の大野選手や達川選手など、江夏選手から多くのことを学んだと証言する広島の選手が数多くいる事がわかりました。真に名選手は後身を育てるとは言いますが、その後の広島黄金期を見るにつけその通りだとうなずかされます。

6、KKコンビ 桑田真澄清原和博
 良くも悪くも、日本プロ野球史における90年代の主役はまさにこの二人といっていいでしょう。私が小学生だった頃は周りはみんな清原選手のファンでよく桑田選手は悪役のようにされていましたが、両選手とも現役末期に他球団へ渡りその引退に至る過程も多くのファンが見守ったというのは、一時代の終わりを感じさせられました。

7、鉄腕 稲尾和久
 江夏選手とともに圧倒的な存在感を感じさせるこのニックネームの由来ですが、58年の日本シリーズにおいてまさかまさかの5連投、そして見事な逆転優勝を引き寄せたというエピソードから来ています。その類稀なスタミナはもとより投手としての技術もあの野村克也氏が最強と評すだけあり、記録の上でもまさに実に人間離れしたものがあります。稲尾選手は07年になくなられていますが、この際には友人と二人でえらくしょげこんだのを今でも憶えております。

8、JFK ウィリアムス、藤川、久保田
 05年の阪神優勝時の必勝継投パターンで出てくる投手の頭文字からつけられたニックネームですが、そのセンスといい当時の存在感といい、近年で私が一番評価するニックネームであります。
 この05年当時は「阪神との試合は6回まで」とまで言われる程、最終三回を完璧に抑えるこの三人のリリーフ陣は非常に強力でした。またこの05年に藤川選手がそれまでのシーズン最多登板記録回数を塗り替えるとともに驚異的な防御率を残して優勝した事から、現在に至るまで野球におけるストッパーのみならず中継ぎ投手の重要性を世に知らしめた戦術であったと私は認識しております。惜しむらくは06年以降はなかなか三人が揃い踏むことなく、昨年のウィリアムス選手の退団によって事実上JFKが解散してしまった事です。

9、大魔神 佐々木主浩
 先程のJFKが中継ぎ投手の重要性を知らしめたのであれば、ストッパー投手の重要性をかつての江夏選手同様に世に見せ付けたのが横浜の佐々木選手でしょう。
 この大魔神というニックネームは横浜がリード時の九回に佐々木選手が登板する際の対戦チームの絶望感とともに、佐々木選手の非常に顔がでかいという特徴が特撮映画の「大魔神」と重ね合わせたというのが由来です。実際の佐々木選手も映画の大魔神同様めちゃくちゃなところがあったようで二日酔いのまま登板してセーブを決めたりなど、漫画の「ササキ様に願いを」同様の濃いキャラクターのようです。


 という具合で、一つ試しに九つの野球選手にちなむニックネームを紹介しました。書く前はもう少し簡単な作業化と思いましたが、各選手の経歴や特徴、ニックネームの由来をどこまで書くべきという配分に悩み、個人的にはやや中途半端になった気がします。これならニックネームごとに記事を書いた方が良かったかも、でもそれだとウィキペディアの記事のがいいだろうし……。

 今回まとめていて思ったのは、広島黄金期の選手のニックネームがどれも秀逸であったことにつきます。どれも各選手の特徴を見事に一言で言い表しており、その上見栄えのよい日本語で見ていてつくづくため息が出ます。同じく広島関連なら「神 前田智徳」とか、「非県民 二岡智宏」というのもあるけど、こういう言葉をぽんぽん作れる広島版のスポーツ紙記者には頭が下がります。

 同じくチームごとの特徴といえば、千葉ロッテの選手にはやけにカタカナ語が多いのも今回気になりました。「ジョニー 黒木智宏」に始まり「サブマリン 渡辺俊介」、「マサカリ投法 村田兆治」、「オリエンタルエクスプレス 郭泰源」など、唯一「精密機械 小宮山悟」があるだけで後はカタカナです。個人的には成瀬善久選手の投げ方が猫の手みたいといわれているため、「ニャース 成瀬善久」と勝手に呼んでいるのですが、流行らないだろうなこれは。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

この記事は面白いなと思いました。この中で好きなのは、JFKですね。某有名な銀行のような名前で、信頼できそうな感じがしてうまく3人を表しているなと感じました。

花園祐 さんのコメント...

 私も、近年の日本で生まれたニックネームの中ではこのJFKが金字塔だと考えています。活動期間が短かったのが残念ですが、今年の巨人の山口、越智、クルーンという投手リレーのように、野球界をひっくり返したという意義とともに素晴らしいネーミングセンスでしょう。