今お盆シーズン真っ盛りのため、連日高速道路の渋滞情報が報道されています。その渋滞を作っている人たちはお盆に実家に帰省するか、もしくはバカンスに避暑地などに行く人が大半だと思われます。
これは私の恩師のK先生がよく語っていた話ですが、日本人はお盆と正月に集中して行楽地へ出かけるのは、経済的には非効率なことをしているというのです。何故非効率かというと、この時期にまとめて移動するために渋滞が起きるからではなく、この時期にしか行楽地を使わないために、旅館やそういった施設というものが一年を通して非常に非効率な経営をせざるを得なくなるからです。
ちょっと算数的な話をしますが、ついてきてください。
とある行楽地があるとします。そこには一年間を通して正月とお盆のある一月と八月はいくらでも人がやってきてどこの旅館も満員になるのですが、それ以外の月だと一つの旅館だと100人しか人が来ません。なので、ひと月あたりの収容人数が1000人、500人、200人の旅館だと、一月と八月にはそれぞれ満杯になりますが、それ以外の月だと皆一緒に百人しか客が来ません。それで一年辺りの客数を計算すると、
1000人:1000×2+100×10=3000
500人 : 500×2+100×10=2000
200人 : 200×2+100×10=1000
という結果になります。そのため、単純に言って稼ぎ時である一月と八月にかけて客を大量に取り込む、つまり収容人数を可能な限り大きくしなければ売り上げが伸びず、旅館の経営が成り立ちづらいのです。見る人によっては、「少ない収容人数でも細々とやればいいのでは」と思うかもしれませんが、やはり経営を行っていくにはある程度の収入を稼がねばならず、どこの旅館も収容人数を大きくせざるを得ないと聞きます。
そうして経営をやってくために収容人数を増やすため、経営者は旅館の部屋数を増やしたり従業員も多く雇うのですが、そういった投資は一月と八月以外では逆に経営の重荷にしかなりません。掃除も毎日しなければならず、労働的にも多く働かねばなりません。かといって一月と八月に客を取り込めなかったらやっていけないので、一種のジレンマに旅館は陥ってしまいます。
しかし、もしこれが一月と八月に集中しなければどうでしょうか。たとえば、毎月コンスタントに250人ずつ来るとします。すると、
250×12=3000
という風に、最大収容人数が250人の旅館でも、先ほどの収容人数が1000人の旅館の一年分と同等の客を迎えられることになります。つまり、コンスタントに客が来ることによって無駄に大きな施設を作る必要もなく、単純計算で4分の1の投資でも同じ売り上げが見込めるということです。もちろん、施設の維持や従業員にかかるお金も単純計算で4分の1になるので、利益も非常に大きくなります。
このように、日本人が娯楽を一月と八月に集中して使うのは日本人全体にとってとても非効率的なことだと、私の恩師は語っていました。この考えはもっとミクロな世界にも通用し、たとえばラーメン屋さんでも、お昼の12時から12時半に客が一気に集中するので、売り上げを伸ばすため店を大きくしなければいけないところを、もっとサラリーマンなどが昼休みを分散して取り、11時から2時くらいまでの間に分けて来ることによって、投資もする必要がなくなったり、お昼の一時間に馬鹿みたいに忙しく働かなくともよくなり、ラーメン屋さんのおじさんも大助かり……という話にもなります。
このように、ほんのちょっとの工夫で社会というものは非常に効率的になり、働く側も負担が減り、サービスを受ける側も、ラーメン屋の例だと混雑に悩まされなくなるなどいろいろ恩恵を受けられるのです。経済学というのは中にはお金儲けの学問だと考えている方もおられますが、実際にはこのように、どうすれば皆で得するのかということを考える学問です。そういうことを教えてくれたK先生に、この場を借りて感謝をさせてもらいます。
2 件のコメント:
こんにちは。村社会的といいますか、休みをとるのを集中するのを分散させると「俺が一生懸命働いているのにあいつは遊んでいる!あいつはなんだ!働かざる者食うべからずだ!まったく!」
というある種の足の引っ張り合い的なメンタリティが薄まらない限り、日本の経済非効率がなくなるのは難しいのではないかと思います。
本当にやろうとするのならば、法律で厳しく取り締まるとかショック療法でいかないと。
ご指摘、ごもっともです。一人だけ休むと周りにあれこれ言われますが、人が働いている時に自分だけ休むのもまた快感なんですよね。
それこそようやく定着し始めたクールビズのように、上から音頭を取って休日の分散は進めるべきかもしれません。まずは第一歩として、こうしたブログなどで取り上げ情報を共有するべきかと思い、書いてみました。
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