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2008年8月7日木曜日

日本の建築業界について

 結構前に書いた、「時代遅れな日本の不動産業界」の記事にて、私は低レベルなサービスしかできない日本の不動産業界について解説しましたが、その後不動産業界に勤めており、大学でも建築学を学んだことのある方と腰をすえてゆっくり話をする機会があり、この業界について詳しく話を聞けました。

 まず最初に私から、日本の不動産業界は本当に質が低いかどうかを尋ねてみたところ、やはり「低い」と断言されました。その根拠として、外国では建築年数が経てば経つほど家賃が上がっていく例を挙げてきました。何故建築年数が経つほど家賃が上がっていくかというと、海外では建築年数が長いということは、逆にそれだけ強度に対して保証があるという証拠になるからです。それに対して日本はというと、知っての通りに建築年数とともに家賃代はどんどん下がっていきます。それだけにとどまらず、家賃代が低下していくために所有者によって古いアパートやマンションはどんどんと壊されていくという、別の弊害も生み出しているとその方は指摘していました。

 実はこの時指摘してくれた内容こそ、私が前から一番聞きたかった内容でした。かつて姉歯元建築士によって引き起こされた強度偽装事件の際、文芸春秋にてこの事件を語った建築学者が、この事件のそもそもの原因は「ビルト&スクラップ」で考える日本の建築業界の価値観にあると指摘していました。この「ビルト&スクラップ」というのは文字通り、建築物を建てては壊すという、日本の建築業界の慣習のことです。
 何故こんなことをしているのかと言うと、建てては壊すを繰り返すことによって誰が一番儲かるか、これも誰でも分かることですが工務店を初めとした建築業者です。つまりわざと長期の使用に耐えられない設計で建築物を建てることによって、年数の経過とともに壊させ、また新しい建物を作らせることによって日本の建築業界はみんなで自分たちの収入を確保していたのです。

 単純に考えて見ましょう。初めに多少お金がかかっても百年の使用に耐えられる家を一軒作るのと、十年ごとに作っては壊してを繰り返して百年後までに十軒もの家を作るのとでは、どっちがお金や労力、資源がかかるのでしょうか。言うまでもなく後者の方がかかりますし、なんというか自分で掘った穴を埋めるという無駄な動作を繰り返しているような滑稽さすらあります。

 言い方は悪いですが国もこうした建築業界の慣習を応援していた向きがあります。というのも、地震大国と言われつつも日本の建築基準は実際にはそれほど厳しくないという噂を聞きます。なんでかというと、そりゃやはり建築業界の人間を潤わせるためです。実際に、阪神大震災以後の建築基準法の改正では耐震基準がそれまでより緩くなっています。

 日本の場合は地震大国ということもあり、災害の度にたくさんの家々が破壊されるので単純に外国と比べるのもなんですが、外国では非常に長く建築物を使っています。たとえばアメリカの有名なクライスラービルなどは1930年に建築され、今でも改装を繰り返してニューヨークを代表する高層ビルとして使用されていますし、私が行ったことのあるインドでは、ガンジス川沿いの建物はそのほとんどが15世紀、日本で言うと戦国時代に建てられたものです。もちろん、今でも人が住んで使用されています。やはり石造りの建物はよくもつので、ヨーロッパでも百年単位で使われている家はまだ数多く残っているそうです。

 日本は地震が多いから、とは言わずに、逆に地震にも耐えられる強固な建物を今のうちに多く作っておくべきではないでしょうか。そうすることによって日本の子孫に対し、真に遺産を残せると私は考えています。

  追伸
 報道もされていますが、あの姉歯事件の後に建築審査を厳しく行うよう改正された建築基準法によって、建築業界のどの会社も新規着工が減ってどこも経営が悪化しているらしいです。つい先月も大阪証券取引所の二部上場企業の、準ゼネコンとも呼べる建築会社が破産申告をしましたが、先ほどの方が言うには大手ゼネコンも台所事情は相当追い詰められているそうです。
 宮崎学氏などはその著書の中で、建築業界は学歴のない人間でもすぐ働けて、雇用の維持の面で重要なのだから談合も必要だし、国も保護すべきだと主張していますが、あんだけ無駄金を投入しておきながら前述のビルト&スクラップの貧弱な建物しか建てられなかったのだから、今こうして潰れていっても私は何の同情も湧きません。公共事業もどんどん減らされていますし、恐らく大手ゼネコンも一社か二社はこれから潰れるのではないかと思います。

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