大分昔に「声に出して読みたい日本語」の作者の斉藤孝氏が、あるテレビ番組にてこんなことを言っていました。
「子供の教育において何をやらせれば一番いいのかといえば、実は料理なのです」
斉藤氏が言うには料理をすることで子供は自然と効率的な動き方、行動の仕方を覚えるので、幼児期の思考の発達において非常に有意義だそうです。この斉藤氏の主張にテレビ番組を見ていた当時高校生だった私は果たしてそんなものなのかなと思いましたが、後年になって自分でも料理をするようになると段々とこの主張に納得するようになりました。
普段から自分で料理している人間なら分かるでしょうが、案外料理というものは非常に複雑なパターンの集合体ともいえるような行為です。たとえばどの食材から切り分けるか、それとも先にお湯を沸かして食材を煮るか、その間に先に肉類に火を通しておくべきなのかなど、行動分岐を数えようものなら何百パターンにも分かれていきます。
それでも一品の料理であればあらかじめ用意されているレシピ通りの順番で作れば間違いはありませんが、これが複数の料理を同時に作るとなれば選択の幅は大きく広がってしまい、どちらの料理のどの作業から初めて同時に何を進めておくべきか、効率的に動こうと思ってもなかなかそのようには動けず、終わってみると随分と回り道をしてしまったと思うような経験を私も何度もしております。
そう考えると、料理作業において効率的に動くというのは非常に難儀なことです。ですが斉藤氏の言うようにそのような料理作業を通してどの行動を優先して行うことが最終的に最も効率的なるのか、そのように考える癖を身に付けて普段から行動できるようになればその他の様々な分野においても非常に応用が利くと私は確信しております。
まず第一に応用が利く場として挙げられるのは、仕事の場です。アルバイトにしろ正社員にしろ、よっぽど管理された流れ作業でない限りは一つの作業中に何かしら突発的な事態や横槍が入るのは当然です。そのような事態に際し、現行の作業を優先するべきかそれとも突発的な事態に対応するべきなのかというのは、それこそ状況次第によるので画一された答えと呼べるものはまずないでしょう。そんな事態に瞬間的に現状を見極め、効率的な選択肢はどちらなのかと考えられてそのように行動できるのであれば、まずもって周囲から期待される位の働きが出来ることに間違いないでしょう。
またこのような仕事の場に限らず、このブログのような文章の組み立てからスケジュールの組み方、果てには資産の運用の場など、この思考法が応用出来る場を挙げれば切りがありません。また以前にもこのブログでちょこっと書いたことはありますが、私は突き詰めて言えば思考というのは事象に対し優先順位を付けることに尽きると考えており、この料理によって鍛える効率的な動き方の考え方というのは根本的な思考力に対しても大きな発達が見込めるとも思います。
しかるにこうした効率的な動き方や思考法というのは、工場での管理以外の現場ではそれほど着目されていないように私は感じます。それこそ斉藤氏のように幼児期から料理などを通してこうした思考を鍛えることは子供の将来的にも教育的にも効果が見込めるので、もっと全体で着目して盛り上げていくべきでしょう。
差しあたっていえるのは、サークルの活動履歴とかどうでもいいような個人的な自慢に着目するのではなく、作業手順に順位付けなどをさせることで企業の採用担当は人材を見極めるべきじゃないでしょうか。
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