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2009年9月15日火曜日

中国語検定について

 すでに何度もこのブログで書いているように、私もいっぱしの中国語使いで今でも向こうの新聞を辞書なしで読むことも出来れば中国人と日常会話をすることが出来ます。とはいえ仮に私が中国語の新聞を取り出して音読みをしたところで中国語を知らない人からすると、それが本当に正しい中国語なのか、本当に私が中国語を理解しているのかはまず分からないでしょう。ではどうすれば私が中国語を使えるのかと他人に証明できるのかといえば、やはり力を発揮するのは外部の検定などによって得られる資格です。

 中国語の資格とくればちゃんと分かっている人はHSKこと、「漢語水平考試」という試験の資格を真っ先に思い浮かべるでしょう。このHSKというのは中国政府が国内の北京語を母語としない少数民族らの大学入学資格を測るために作られた試験なのですが、現在では主に外国人らが自分たちの中国語の技量を測るために受験しております。
 試験概要を簡単に説明すると、このHSKには「初、中級」と「高級」の二種類のテストがあり、それぞれのテスト成績内で何級かを測定されます。なおそうして得られた成績の証明には有効期限があり、確か一年間だけだったと思いますが、私の場合はすでに三年前の成績ですが「初、中級」の七級資格をかつて得ました。

 しかしこのHSKですが、お世辞にも日本国内で知られている試験ではありません。実際私も履歴書に書く傍から「何これ?」と聞かれまくり、一社の担当者だけが知っていてそこだけは話が早く済みました。では日本、というよりも日本企業の人材担当者が中国語使いを見る上で何を重視するかといったら、今回の題にある中国語検定です。結論から申しますが、私は逆にこの中国語検定を初めから信用しておらず、こんなもので中国語のレベルを測ること自体が大きな間違いだと思います。

 いきなりこう全否定しておきながら言うのもなんですが、私も一応は外面を保つためにこの中国語検定の三級は取得しております。「一年間も北京に留学していたのだから、三級といわずに一級とかをなんで取らないの?」、ということをたまに友人に聞かれますが、何故私が三級以上の試験を受けなかったのかというとこの検定に受ける価値がないと判断したからです。
 留学から帰国直後、当時の私もまだ中国語をしっかり覚えている状態で可能な限りこの中国語検定で高い級を取っておこうと考え、三級とは言わず二級か準一級を受験しようとしたのですが、書店で販売されている公式テキストを見てそうした考えが一挙に吹っ飛んでしまいました。

 まず何に驚いたかというと、二級の試験問題に使われている中国語表現のほとんどが全く見たことも聞いたこともないような代物ばかりだったからです。はっきり言って古文や漢文のような、ネイティブの中国人に聞いてもまず知らないであろう訳の分からない四字熟語や一般的には全く使われない単語が羅列してあり、多分覚えても役に立たないであろう問題内容ばかりでした。仮にも私は一年間北京にいましたが、普通に受験してもきっとこの二級の試験には今でも合格できないでしょう。

 そんな役にも立たない中国語知識を得るために勉強時間を作るのも馬鹿馬鹿しかったので、何も勉強しないでもまず受かるであろう三級に受験試験をシフトしたというわけなのですが、試験前に一応ざらっと問題集を解いているとここでもまたいろいろ驚かされることになりました。

 ちょっと専門的な話になりますが、中国語では「状態補語」といって比較表現と組み合わせてその程度を表す表現があり、使い方はというとこんな具合で使います。

・名詞(A)+比+名詞(B)+動詞+得+副詞

 この形で、「AはBよりずっと~だ」みたいな表現が出来、ちょっといくつか例示すると、

・北京冬天比東京冬天冷得多。(北京の冬は東京の冬よりずっと寒い)

 という風に使ったりします。

 ここで問題なのは「得」という漢字の後に来る副詞です。普通この表現を使うときは「ずっと~」と言うことが多いので最もポピュラーなのは「多」という漢字なのですが、中国語検定三級のテキストでは何故かそのような場面には「很」という漢字を使うことになっており、先ほどの表現を使うと、

・北京冬天比東京冬天冷得很。

 というように、実際に三級のテキスト問題でもこのように選ばないと間違いになる問題が盛り込まれていました。
 しかし、はっきり言って私はこんな中国語を一度たりとも北京で聞いたことはありません。それどころか北京語言大学の授業でこの単元を学んでいる最中に先生から、「この表現では絶対に”得”という字の後に”很”を使ってはいけませんよ」という注意まで受けています。

 こんな具合でこれ以外にもいくつか疑問と思える表現が中国語検定では見受けられ、こんな試験に意味があるのかと思いつつ本試験に臨んだら案の定選択問題でこの表現が出てきたので、中学生くらいの自分だったら、「いいや、お前が間違っている!」とばかりに「該当なし」と回答したでしょうが、私も大分こなれて来ていたので「很」を選んで見事合格したわけです。

 調べてみるとこの中国語検定を実施しているのは「日本中国語検定協会」というところだそうですが、前の漢字検定もいろいろと問題があり、試験内容についても上級の試験はただ難しい漢字の羅列だけで何の教養にもなっていないと批判されていましたが、なんだか私はこの中国語検定にも同じにおいを感じます。
 最後に各企業で人事担当をしている人に伝えたいのですが、こうした資格とかで相手を値踏みするのが如何に簡単だからといって安易にそれを鵜呑みするべきではないでしょう。本気でいい人材かそうでない人材かを見極めたいのなら、もっと時間を掛けて個別に面接とかを実行するべきじゃないかと、今年の就職活動で苦しんだという後輩らの意見を聞いていてよく思います。

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