1、雨格子の館 評価:B
いわゆる「一柳和」シリーズの一作目。非常に気弱でなよなよした大学生が探偵役となるこのシリーズですが、他のアドベンチャー作品と一線を画す点では、展開の進め方によって本来死ぬ予定だった被害者が生還してその後もストーリーに関与し続けるという点です。
ストーリーとしてはよくある閉ざされた洋館で連続殺人事件が起きるという奴ですが、犯人を当てないまでも次のターゲットを正確に予想することで、何もしなければ殺されるキャラが殺されずに済みます。同時に、犯人を名指しするタイミングも序盤から終盤にかけて毎日1回ずつあり、一人目の被害者が出た段階で即犯行を止めることができます。こうした、ストーリーにプレイヤーが介入できる余地に関してはアドベンチャーげむの中でも屈指のものがあり、非常によくできたシステムだと感じます。
惜しむらくは、ベストエンドにするためには非常に詳細に証拠を集めたり、聞き込みして動機まで解明しなければならず、これは攻略法なしだと非常に難易度が高いということです。
もう一点、犯行を防いでターゲットを生還させたとしても、生還したターゲットは他のキャラクター同様に事件に巻き込まれないよう、その後もずっと部屋に閉じこもりであまりストーリーに絡まない点です。もっとも絡ませるとしたらフラグ管理がとんでもないことになるので、この点は仕方がないでしょうが。
このシリーズはその後第三作まで制作され一応全部購入しているのですが、第二作目がバグが多く、私もプレイ序盤から何度もバグに悩まされ一向に進行できなかったので結局やらずに終わりました。
2、密室のサクリファイス 評価:D
ジャンルとしては脱出ゲーに入るのですが、ノベルパートのシナリオが非常によくできている作品です。ある日突然主人公となる五人の少女を除き誰もいなくなった世界が舞台なのですが、この五人の少女が妙にリアルというか、一緒にいるとすごいギスギスし合い、実際に進行によっては互いに実質的に殺害し合ったりするなど、非常に先の気になるストーリ―でした。
このようにシナリオ面はすごくいいのですが、脱出ゲームパートに問題があるというか、やばいくらい難しかったです。普通に序盤で一切先に進めなくなって攻略サイトに頼ったのですが、後半に至っては攻略サイトを見てもどうしてこれで正しいのかすらわからないくらいの難解ぶりで、ノーヒントでエンディングまで行った人は多分怪盗ルパンだと思います。そのためシナリオはいいのですが人には進められる作品とは思えず、評価はDとしています。
3、特殊報道部 評価:C
「流行り神」シリーズを作ってきた日本一ソフトウェアの、テレビ局を舞台(メーテレが協力)にしたXファイル的なアドベンチャーゲームです。一応アドベンチャーゲームとなってはいますが、分岐などのゲーム性は皆無に等しく、実質的にシナリオを読むだけのノベルゲーです。ただシナリオ自体は比較的面白く、先が気になるもので、あと声優も実力派の大物揃いで音声聞いてるだけでも正直楽しかったです。
問題点はボリュームで、シナリオ数が少なくすぐ終わってしまいます。もっともあのゲーム性で長くしてもプレイヤーもダレるだけだったので、初めから普通にサウンドノベルとして作ればもっと違ったかもしれません。
4、√letter 評価:D
島根県に過去の文通相手を探しに行くというコマンド選択型アドベンチャーゲームで、セールス的には海外販売も行われ非常に大きな成功を収めています。よかったと思う点を挙げると、ビジュアルが非常によくできており島根県の実際の観光地などの風景をきれいに再現しており、実際に旅した気分にさせられました。
にもかかわらずなんで評価Dなのかというと、単純にシナリオがクソだからです。文通相手の友達を一人一人探り当てて、本人に一人ずつ認めさせるという展開なのですが、そんな展開必要なの?と、思わざるを得ない内容でした。シナリオ分岐はあるっちゃありますが、終盤とエンディングの展開しか変わらず、実質的にほぼ一本道なシナリオです。唯一、ホラーエンディングに分岐した場面は素直に恐怖を感じましたが、それ以外はさほど感じ入るシナリオはありません。
あとレビューサイト見ると、主人公がまるでヤクザみたく文通相手の友達に追い込みをかけているとよく書かれていますが、私はそうは思いませんでした。あれくらいは日常よくあることだし、ひっぱたいたり拉致ったりはしてないんだから、そこまで大げさに感じるほどかレビュー見てて逆に不思議でした。日本の平和ボケもかなり来ているように感じます。
出てきたらもうすぐ死ぬっていう刻印が出てきた主人公らが、助かるために街の怪異を解決していく昔ながらの市街系ホラーアドベンチャー作品です。この手の一般的なアドベンチャー作品と違って、ダンジョンを探索するかのようにポイントを巡って、パートナーと協力しながら手がかりを探していき、最後は怪異たる存在とバットとか拳銃使って戦うという展開になります。
控えめに言っても、コンセプトデザインを仕切った友野るい氏のセンスが非常によく、恐怖を感じさせる表現面では屈指の出来と言っていいでしょう。またシナリオも破綻がなく、実際にやってて怖いと感じさせる忍び寄る恐怖がよく演出できており、完成具合に関して言えば文句なしに傑作だと言えます。
しかし他のレビューでも書かれているように、致命的なほどボリュームが少ないということを考えると、一つのゲームとしては凡作とせざるを得ないところです。3000円くらいの価格だったら、十分傑作といえるのですが、フルプライスではさすがに文句なしのお墨付きは出せないでしょう。
なおこの作品でヒロインの声を演じているのがりっかすこと立花里香氏で、自分はこの作品でこの人の声を初めて聴きましたが非常に印象に残り、さらにその後「ザンキゼロ」やったらまた綺麗な京都弁でいろいろ唸らされました。オリックスの若月選手とついこの前結婚されましたが、前にパワプロで若月選手からオリックスの捕手レギュラーを奪い取り、引退に追い込んだことがあるからなんか微妙な気分になりました。っていうかこの情報いるのかと、自分でも思います。
6、VA-11 Hall-A 評価:C
評価はCですが内心ではBをあげたい作品です。近未来のSF都市を舞台に女性バーテンダーとして、バーにやってくるお客の話をカクテル作りながら聞くという作品です。一番特徴的なのは、ゲーム画面がPC-98時代のレトロゲームを模している点で、古臭くて懐かしいドット絵のアドベンチャーって点だけでも他にはない強い個性が光ります。
シナリオもSFらしいというか、非常にタブーが低く、またバーという場所柄、かなり大人の世界な会話が繰り広げられます。主人公からしてバイセクシャルで、携帯の待ち受け画面にするくらいの思い人は女性上司だったりして、その手の会話や下ネタもガンガン投入してきます。恐らくこうしたシナリオ内容も、PC-98時代の影響でしょうが。
既に取り上げた「Eve burst error」と「YU-NO」について私は、「時代に愛された作品」と評し、あの時代だからこそタブーとされるような内容が物珍しく映り、評価されたのではと述べました。この点を強く意識したのはまさにこの「VA-11 Hall-A」をやった時で、正直こっちの作品の方が引っかかるタブーの内容が「Eve burst error」と「YU-NO」とかよりも多いです。
しかし、ことさら目につかないというか現代においてはもはやタブーでなくなりつつある話題でもあり、そうした内容を「重く」扱うことはもはや滑稽にしかならず、「軽く」扱うことこそが現代の価値観に沿うのではないかという気がします。そういう意味でこの作品は、こうした方面の話題の塩梅が現代にマッチして非常にいい塩梅だという気がします。
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