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2020年2月15日土曜日

ノベルゲーレビュー その六(イエティ系列)

 少し間が空いてのまたこのレビューの再開です。暇なときは好きな記事を書くに限ります。
 今回は最後のを除き、比較的時代が近いパブリッシャーがイエティという会社で、同じノベルゲー専用ゲームエンジンを使っているソフトを紹介します。

1、ルートダブル 評価:D
 レビューサイトで傑作という評価だから買ってみたけど、ただテキストが長いだけであまり評価できるソフトではないというのが結論です。一応、キャラクターの性格にエニアグラム使ったり、各キャラクターに対する親近感を入れることで話を分岐させるなどいろいろな試みがなされていますが、後者はただ面倒なだけで普通に選択肢選ぶのとあんま変わんなくて、それほど画期的なシステムとは思えませんでした。
 次にストーリーですが、自分に限れば中盤の時点で結末がほぼ完全に読めました。具体的には、「きっとこのキャラはあのキャラの生き別れの○○で元凶なんだろう」というレベルまではっきりわかったくらいです。というのもこのゲーム、序盤にものすごい量の伏線を張っているせいで、一つでも伏線の推測が成り立つと、芋づる式に他の伏線の解釈も成り立ち、その後の展開が簡単に読めてしまうようになっているからです。

 また原発事故という深刻なシチュエーションながら、キャラ原画は如何にもな美少女ゲームテイストな造形をしていて、正直萎えました。この点、一般的な美少女ゲームから大きく逸脱したデザインを敢えて採用した「シュタインズ・ゲート」とは対照的で、もっとリアル寄りのキャラデザインにしておけば見方もまた違ったと思います。
 あとこれは個人的な感想ですが、Bルートの高校生の主人公についてははっきり言って、物凄く痛い奴に見えて仕方ありませんでした。Aルートの主人公の方が人気だったことに製作者は意外だったと言っているようですが、私から見ればそりゃ当然で、Bルートの主人公がとにもかくにも痛々し過ぎてて、はっきり言って気持ち悪いことこの上ないキャラです。なんていうか激しい中二病患者を黙って延々みさせられるような感覚ともいうべきか。

2、デイグラシアの羅針盤 評価:B
 この前レビュー記事書いたばかりですが単純に傑作だと思います。ノベルゲーと相性のいい深海という閉鎖空間の中で、科学的考証もよくなされたストーリーに、実質的に分岐は二か所しかないながら、たった二か所の分岐だけで物語の解釈を無限に広げられるほど解釈余地が存分に用意されています。
 元は同人ゲームということからキャラクターの立ち絵や一枚絵、あとBGMなどが貧弱と指摘されていますが、私としてはやはりノベルゲーはシナリオがなんぼであり、他の要素も良ければ大したものですが、シナリオさえよければ気にするほどでもないと考えています。逆を言えばこの作品は、単純にシナリオの出来だけで高評価を勝ち得るだけの素質を備えた作品だとみています。

3、シークレットゲーム 評価:B
 同じく元は同人ゲーム発のノベルゲーで、参加者全員に殺し合ってもらうといういわゆるデスゲーム物です。分岐はなく用意された複数のシナリオをただひたすらに読むだけの作品ですが、デスゲーム参加者の背景、そしてゲーム参加時のクリア条件などの設定が秀逸であり、また全編にわたってやるかやられるかという緊迫感に満ちたシナリオから、遊んでいる最中は非常に楽しかったです。
 前に出したレビュー記事にも書いていますが、シナリオクリア時に生き残ったキャラクターを見て非常にホッとするというか、読んでるだけなのに生き残ったという実感がさせられる文章で、単純に読ませる文章なのは優れた点です。前評判に違わず、こちらも傑作ノベルゲーだと言えるでしょう。

4、リベリオンズ 評価:D
 正直いって評価はEでもいい気がします。 このゲームは一つ上の「シークレットゲーム」の続編ですが、前作の良かったところをほぼすべてスポイルし切っている稀有な作品です。敢えて例えるなら、何時間もかけて出汁を取ったスープを味見して、納得顔しながら流しに捨てるような。
 シナリオは全編を通して陳腐且つ低次元としか言いようがありません。前作はデスゲームとなる舞台の設定とキャラ背景が非常によく練られており、同じ舞台設定ながら複数のシナリオどれもが読み応えのある作品でしたが、こっちの「リベリオンズ」の方は逆にこの設定面がガバガバもいいところで、話もご都合展開が非常に多かったです。また前作との橋渡しをするある共通キャラクターが存在するせいで解釈余地が極端に狭められるという、やっちゃいけない演出の手本みたいなことをやらかしています

 具体的な内容面に言及すると、前作はデスゲーム参加者だけでなく運営者もゲームのルールに縛られており、運営が特殊な介入をするに当たってはいろいろな制限がありました。しかしこちらではそうした運営側の介入制限はほぼなく、言っては何ですがやりたい放題もいいところで、シナリオライターにとって都合のいい展開がポンポン作り出されているように見えて仕方ありませんでした。
 唯一評価できるのは、粕谷瞳役の声優のひと美氏の達人芸を拝めることくらいです。それ以外に関しては、ただ前作の栄光を貶めることを目的に作っているようにしか見えませんでした。

5、ЫΞδ 評価:F
 先日、名前を出すのも憚られるとあるゲームを遊びましたが、このゲームは普通の人はやってはならないとはっきり思いました。どういうノベルゲームかというと端的に言って「拷問ゲー」で、全編にわたっていろんな登場人物が様々な責め苦を味わされ、目をそむけたくなるような描写と悲鳴が延々と続くゲームでした。あまりの内容の激しさに、銃で撃たれてすぐ死ねるということは本当に幸せなことだと、今現在も本気で信じるくらい価値観をひっくり返されました。
 何が凄いかって、このゲームのシナリオライターはよくあんだけ拷問描写を何本も考えられるなってことです。一応、拷問描写を除いた全体のシナリオ骨子も別のテーマがきちんと踏襲されていて優れているのですが、それ以上に拷問の種類や方法が激しすぎ、あんまり本筋のシナリオは入ってきませんでした。あと声優も、あんなむちゃくちゃなセリフをよく収録したものだと変な意味で感心させられます。

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