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2020年2月8日土曜日

ノベルゲーレビュー その二(スーパーファミコン時代)

 果たして需要があるかわからないこの連載レビュー記事ですが、周囲の声は無視して続けていきます。書いてるこっち側としては結構楽しいのですが。

1、夜光虫 評価:E
 チュンソフトの「かまいたちの夜」のヒットに続いて現れた最初のフォロワーでしたが、正直言って惨澹たる出来でした。音楽、演出ともに拙く、何よりもシナリオの破綻ぶりがひどかったのが記憶に残っています。シナリオは大まかに二種類にしか分かれず、しかもどちらへ行っても舞台となる貨物船が難破するのであまり変わり映えがありません。単純にシナリオ量を確保できなかったことが失敗の原因でしょう。

2、月面のアヌビス 評価:C
 イマジニアから「ざくろの味」とともに出されたサウンドノベル作品ですが、当時としては珍しく、宇宙ステーションを舞台にしたシナリオとなっています。やはりサウンドノベルのシナリオは閉鎖空間と相性がいい傾向があるだけに、絶対に救援など期待できない宇宙空間を舞台にしたSFホラーという点で着眼点が良かったと感じます。
 シナリオは決して抜群にいいとは言えないものの十分及第点といえるレベルで、それなりに先の気になる内容で遊んでて楽しめました。まぁチンパンが露骨に怪しいというのはお約束と割り切れるかに寄りますが。

3、ざくろの味 評価:D
 上の「月面のアヌビス」とほぼ同時期に出されたサウンドノベル作品ですが、アヌビスの方は宇宙ステーションを舞台に多国籍なキャラクターが登場するのに対し、こちらのざくろの方は日本の出版社と同じビルの住人らという、非常に狭い舞台となっています。
 シナリオのショッキング度はそれなりに高いのですが、逆を言えばそれしかなく、非常にツッコミどころの多いシナリオです。ご都合展開が非常に多く、突然ビルが陥没した後、「なんということだ、会社の地下に旧日本軍の研究施設があったなんて……」という事実が会社のパソコン弄ってたらわかるというような無理な展開が延々と続きます。

 また地味に選択肢の使い方も工夫が感じられず、メインシナリオでグッドエンディング行くためには終盤で複数の選択肢をほぼノーヒントで一度も間違えずに選ばなければならず、このため何度もバッドエンドを見る羽目になりました。魅力あるキャラもおらず、アヌビスと比べるなら向こうの方が数段優れていたというのが私の評価です。
 なおキャラクターの描写に関しては「かまいたちの夜」同様にシルエットで表示されます。このシルエット表示は近年あまり見なくなったのが寂しいです(´;ω;`)ウッ…

4、魔女たちの眠り 評価:C
 赤川次郎氏の小説「魔女たちのたそがれ」、「魔女たちの長い眠り」を原作とした作品で、下地となっている原作の良さもあってシナリオは十分及第点です。また一枚絵も割とショッキングなものが多く、「おまえの血がほしい」の場面で出てくる絵は今でも十分な迫力があると思います。
 ただ欠点もないわけでなく、シナリオの分岐にあまり幅がありません。またシナリオは第一部と第二部に分かれてるのですが、一度エンディングを迎えた後はそれぞれのスタート箇所からしか再開できないため、フラグを埋めるのが地味に面倒くさかったです。もう少し完成度を高めていたら文句なしにB評価を出せたと思うだけに、詰めの甘い作品だったと思います。

 なおこの作品のシナリオはかなりショッキングですが、原作の小説はもっとショッキングです。どんな具合にショッキングかといったら、割と皆殺しが続くといったところでしょうか。

5、学校であった怖い話 評価:A
 単純に文章を読みながら選択肢を選び進めるだけの純粋なノベルゲームの中でいうならば、この「学校であった怖い話」こそが史上最高傑作ではないかと密かに睨んでいます。一体何故そう言えるのかというと、この作品はとにもかくにもシナリオの量、本数ともにスバ抜けており、長年遊んだプレイヤーですら久々に取り出して遊んでみると未見のシナリオやテキストに遭遇することも珍しくないからです。
 またそのシナリオも六人の語り部から「学校の怪談」を聞くという形式をとっており、語り部の話し方やキャラクターも色濃くシナリオに反映されているため、従来の一人称視点で進んでいくだけの述べるゲームとは違った味わいがあります。それでいてシナリオ内容もどれも読ませられるものであり、且つ無意味な選択肢が少なく、本当に選んだとおりの数だけシナリオが広がっていくという点でも高い完成度を誇ります。

 このほか地味に音楽や、やや粗雑だがそれ故に恐怖感を煽るグラフィックも非常に優れているのですが、それ以上に演出の妙も非常に光る作品でした。徐々に音量を上げてくるBGMなどいろいろありますが、何と言っても一番印象深いのは隠しシナリオで、決まった手順で進めないと登場しないものの、苦労して登場させた甲斐があると思うくらい他のシナリオとは群を抜く出来栄えとあって、プレイしていていろいろ感動がありました。
 もっともその隠しシナリオの「仮面の女」は、今やっても寒気を覚えるくらい怖いものでした。あと「人形」シナリオも、迫りくる恐怖という意味ではぜひ模範としたい文章となっています。なおその「人形」シナリオを遊んでいる最中に友人が、「この語り部の話し方、後輩に似てね?」と言い出したせいで、シナリオ読んでると後輩の音声が頭の中で再生されるということとなってしまいましたが。

6、晦 評価:C
 上記の「学校であった怖い話」の製作チームが作ったサウンドノベルゲームですが、その出来栄えは前作からガクンと落ち込んでいます。理由はいくつかありますがまずはシナリオで、前作同様に六人の語り部から話を聞くという形式ながら前作と比べると選択肢の幅が少なく、シナリオ本数もガクンと少なくなっています。また前作が学校内の話に限定されていたのに対し今回は学校外のあらゆる場面がシナリオに登場しますが、なんていうかシナリオの舞台は広がっているのに幅は狭くなっているような感じがするというか、全体として統一感を欠いてしまったのが失敗だった気がします。
 またゲーム性の面でも、選択肢を一つ間違えたら即バッドエンド行きというパターンが増え、単純に面白味が低下しました。他の作品にも言えますが、バッドエンドはあまり多く作っても、プレイヤーに無駄にストレスをもたらすだけにしかならず、極論を言えばむしろない方がいいとすら思います。

 いま改めてこの「晦」でどんなシナリオがあったか思い出そうとしましたが、ほとんど記憶に残っておらず、唯一思い出せたのが廃墟となった洋館を探索するシナリオだけです。あれはそこそこ怖かったけど、結末がまたひどい出来だっただけに、やはり全体として完成度が低い作品と言わざるを得ません。

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