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2008年12月30日火曜日

田母神論文再考

 昨日のテレビ朝日の番組「テレビタックル」にて、アパグループ主催の懸賞論文に当時空幕長という航空自衛隊のトップでありながら政府見解と異なる、二次大戦時の日本の行動は侵略に当たらないなどという主張が書かれた論文を投稿した旨で更迭された田母神俊夫氏が出演し、それを見た感想を以下まとめようと思います。

 前段階として、いわゆる「田母神論文」への私の評価は「田母神氏の参考人招致について」で書いた通りで、この中で書いてある評価は現在を持ってもなにも変更する点はなく、やはりこの論文については疑問視しております。
 それでまず番組を見て私が感じた田母神氏の印象ですが、非常に真面目すぎる人間だと素直に感じました。
 登場時に他のゲストから問題化した当初は大変だったのではないのかと言われると、「(批判などで)叩かれてももうこれ以上私も小さくなれませんから」と、自分の背の小ささをかけて冗談から始め、ちょっと前の週刊文春の記事に書かれていた通りに隙があればいくらでもダジャレや冗談を言うという情報の通りでした。なお、「叩かれても小さくならない」というフレーズは相当あちこちで使っているらしいです。

 それで問題の本質へと議論が移ると、この論文を出したことについて思うことはないかという問いに対して一切後悔する気持ちはないと言い放ち、その後も自説の正当性を主張するとまでは行きませんでしたがあくまで一個人の意見に対してこれほどまで世間が反応するのはおかしいのではと主張し、その上で自衛隊のおかれている現状の問題性を終始強く主張していました。

 細かい発言などはこの際省きますが、田母神氏が更迭されたことや政府の処置については一切不平を言わず、投稿した論文の内容でも一切譲ろうとしない態度を見て、この人は少なくとも公の場で嘘はつかない裏表のない人間だと私は思いました。しかし裏表がないといえば誉め言葉ですが、どんな状況においても自分の考えや言葉を正直に述べてしまいかねない人間で、そのために今回の問題もいろいろ大変になったのだと思います。

 討論を見ていて一番印象に残ったのは、やはり田母神氏の言う自衛隊の現状でした。
 それこそイラクなどで命がけで自衛隊員は活動しているにもかかわらず、政治における自衛隊を存否を巡る法整備は一向に進まないため、自衛隊の側からこうした現状の改善や議論の声を挙げる必要があるという田母神氏の主張には私も納得しました。田母神氏の言うとおりに、現在国会などで自衛隊の存在や法規定についての議論はほとんどなされないにもかかわらず、この前のイラク派遣や対北朝鮮問題など自衛隊が行う活動の範囲は広がっています。番組内で確か三宅氏も述べていましたが、敵に銃を撃たれてから出なければ銃が撃てないのにイラクに行くなんてそもそも間違っており、こうした活動範囲の議論から存在などを正式に認めるべき時期はとうに過ぎており、番組内でも言われていましたがこの点については政治家のサボタージュと言っても間違いないでしょう。

 ちょっと他にもいろいろ田母神氏のこの討論であれこれ書きたい内容があるのですが、ちょっとまとめ切れてないので機会があれば別の話題と合わせてまた紹介しようと思います。
 最後にこの論文に問題性があるのかどうかという議論で、どうもこの論文がメディアに大きく注目された背景には自衛官こと背広組と自衛隊こと制服組の防衛省内の対立があり(出張所の方で、背広組も制服組も同じ「自衛隊員」であるとのご指摘を受け、この箇所の表現は「背広組こと内局の事務官(キャリア)と制服組こと自衛官の防衛省内の対立」と修正させていただきます)、実際にはこのような戦前の旧日本軍の行動について書いた論文はこれまでにもたくさんあったにもかかわらず田母神氏の論文だけがこうして問題化したのは、背広組の中でどうもどこかにチクッた奴がいるのではという話が示唆されていました。田母神氏はこの点について口では否定してましたが、この人は嘘がつけない人なのか、顔にはしっかりと肯定しているように私は見えました。

 背広組の代表格といったら、この前汚職事件で有名になった守屋前事務次官が有名ですが、こういった点も含めて防衛省へは今後も注視が必要でしょう。なんにしても、これで終えてしまうことが一番問題です。

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