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2008年12月6日土曜日

内定取消しについて

 先ほど民放のニュースで取り上げられましたが、わかっている範囲内で現在問題となっている今年新卒の就職内定の取消し者数が315人に達しているようです。私自身はこの内定が取り消された四回生の学生たちに対しては同情する気持ちが強く、特に53人もの大量の内定者すべてに対し内定取消しを行った日本総合地所での報道で取材に答えた大学生が、日本総合地所は内定を得た6社の中から選びに選んだ会社であったので非常に残念だと言っていたのを聞き、もしこれが事実上の一時内定締切りに当たる十月一日が来る前に取消しが行われていればまだ救われた可能性があったことを考えると、如何にこの内定取消しに問題性があるのか強く考えさせられました。

 しかし大半は私のようにこの内定取消しについては同情論が多いものの、中には違った意見を言う人もいます。私のなじみの喫茶店のおばさんに至っては、
「そもそも内定自体が法的根拠も何もないお互いの口約束みたいなもので、学生の側も入社間際の三月になって就職を断ることが出来るのだから、冷たいようだけど企業の側に取り消されても仕方がないのでは」

 という風に言っており、言われてみると確かにそんな気もしないでもないと、この意見にも一理あると思います。そこから考えを発展していき、私は今回の問題はそもそもこの「内定」という日本の雇用慣行自体に原因があるのではと思い始めてきました。

 元々、私はこの企業の新卒採用の方法に以前から疑問を持っていました。現在どこの企業でも内定者をふるいにかけるための「内定式」が行われる十月一日は、ほんの十数年前までは企業が採用活動を公に始めてもよいとされるスタートラインの日であり、当時の卒業を控えた学生たちも十月から就職活動を始めていました。しかしその後、最近私も忙しくてなかなか書けずにいる失われた十年の間に企業が新卒採用を絞りに絞った挙句、優秀な学生だけを出来るだけ受け入れようと採用活動の期間が不規則に成った挙句にどんどんと早まり、現在では一部で「紳士協定」と言われる四月一日が採用活動のスタート日と、一応はされています。
 しかし近年に就職活動をやったことのある方なら言わずもがなですが、実際にはその四月以前よりどの企業も公然と採用活動を行っており、特にニュースで報道されている極端な例に至っては三回生の夏休み、もしくは三回生になる四月ごろから説明会など採用活動を始める企業が続出しており、先ほどの紳士協定なぞもはやあってないようなもので、学生の側としても四月はむしろ内定が次々と出される、「就職活動がある程度終わる月」として認識されています。

 これがどのように問題かというと、私も自分の恩師と何度もこの問題で話をしてきたのですが、単純に言って学生の勉強する期間というものが大幅に制限されてしまいます。昔のように四回生の十月以降であればそれまでは大学で大いに活動することができ、また卒業論文なども四回生になった時点から作成して十月以前に仕上げれば就職活動などにも影響せずにしておくことができます。
 しかし現在のように三回生から採用活動が始まると、やはり企業へ面接なり何なりと出向くためにその分学校の授業には出られなくなります。また早くに内定を得ればそれ以降は大いに勉強できるはずだと言う人もいますが、私の見ている範囲内だと大方の学生は内定を得るとすっかり安心して、ただでさえ授業に来ないのがもっと授業に来なくなったりする例のほうが多いように思えます。それに早くに内定を得られればとは言いますが、中にはなかなか内定を得ることが出来ない学生もおり、そのような場合だと三回生から四回生までの間丸々二年も就職活動に費やされてしまうということさえもありえます。

 また学生への調査でも、近年の好景気を反映して企業の採用数は大幅に増えているにもかかわらず多くの学生が就職活動に対して「非常に苦労した」と答える率が就職氷河期と比べて大差ないほど寄せられており、これには就職活動の期間の延長が影響していると分析されています。
 そうして学生を早くに確保する企業の側でも、実際の就職まで一年もの長い期間をおいているために途中で内定辞退を受けて急に数が足りなくなるなどあれこれ不都合な結果を招いております。言ってしまえば、学生にも企業のどっちに対してもこの大幅に急がれる内定慣行が大きな負担となっているように私は感じます。

 今回の内定取消しも、こうした背景から起きてしまったある意味システム的な欠陥による問題だと私は考えています。では具体的にどうすればいいかですが、単純に言って卒業後に一種のモラトリアムを設けるのが一番よいのではないかと思います。これはどういうことかというと、簡潔に言って在学中の学生へ企業は採用活動を一切行ってはならないということです。
 企業の新規採用、及び採用活動は卒業後の学生にしかやってはならないとして、学生の側も卒業するまではみっちり勉強して、授業やその他一切のもろもろの束縛から完全に解放された後から就職活動を行う風に慣行を変えていくという方法です。これによって学生の側は就職活動に専念することが出来、また企業の側も早くに内定を出して辞退者を続出させるというような辞退を避けることができ、また必要に応じて採用活動期間や就職時期を自由に決めることが出来ます。
 なにもこのモラトリアム案を使わずとも、企業の採用活動時期を昔みたいに十月以降に制限しさえすれば、今回のように急激な業績悪化の事態を受けてもある程度対応できたと思います。

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