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2009年9月26日土曜日

片山善博氏について

 ダムのことについて書いたばかりなので、ちょっと関連するかどうかは微妙ですが私が一目置く政治家であり大学教授である片山善博氏について一本記事を書いておきます。

 この片山氏というのは一昨年まで鳥取県知事を二期八年やっており、現在は鳥取大と慶応大の教授をなさっている方です。知事在任中は常に高い支持率を維持し、地方分権派の知事として中央に長く働きかけ続けてその手腕、行動力についてはかねてから高く評価されておりました。

 そんな片山氏を、四年位前の私が初めて知ったのはあるエピソードからでした。
 現在東京と副知事を務める作家の猪瀬直樹氏が自身のエッセイにて、まだ猪瀬氏が若かった頃、本格的に作家として身を立てようと決意したものの先立つものがなく、悩んだ挙句に彼が向かったのはなんと政府系金融機関だったそうです。詳しい名前は失念しましたがそこは中小の企業家向けに起業資金を貸し与える金融機関だったそうで、猪瀬氏はそこの窓口の職員に向かって、

「自分はこれから作家として身を立てていく。ここは起業家に起業資金をくれる場所なのだから、当分生活するだけのお金を自分に貸してくれ」

 はっきり言ってこうして文面にすると、やくざか何かが金をせびっているようにしか見えませんね。実際に猪瀬氏も内心では無理だろうと考えていたそうなのですが、その職員はしばらく席を離れると、わかりましたと言ってなんと本当に猪瀬氏にお金を融通してくれたそうです。そのお金がどこまで役に立ったかまでは分かりませんがその後猪瀬氏は念願かなって作家として生活できようになり、ある日テレビで討論番組を見ているとあの時に何も言わずにお金を貸してくれた職員こと片山氏が、鳥取県知事として出演しているのを見つけてびっくりしたそうです。

 このエピソードだけでも片山氏は相当な人間だと思わせられるのですが、以前に読んだ本人の知事在任中の話として、こんなものもありました。

 なんでも片山氏の知事在任中、鳥取県内のある地域の治水対策のためにダム建設か堤防工事をしなければならない案件が出たそうです。そこで両工事の費用を見積もったところ、ダム建設の方が堤防工事より安いと出てきて、ダムであれば発電も出来るし安いのだからそっちの方が良さそうだとまとまりかけたそうなのですが、片山氏はその出てきた見積もりを見ていてどうもおかしいと感じ、県庁内の担当職員を呼び出してこう言ったそうです。

「今ならまだ怒らないよ」

 こうして書くと、随分と恐ろしい殺し文句に聞こえてきます。多分こんなこと言われたら、身に覚えがあったら大抵は白状してしまうかもしれません。
 そしたら実際にこの時の担当職員は白状し、実はダム建設の見積もり費用は大分以前の基準で出した見積もり費用であって、現在の基準であれば堤防工事の費用を上回ってしまうということを明かしたそうです。それを受けて片山氏は、安くで済ませられるというのならと堤防工事を選んだそうです。

 このエピソードのまとめとして片山氏は、予算一つでもいろいろな思惑の元に方針が歪められることもあり、それを如何に持って行きたい方向に持っていくべきかとしていましたが、このエピソードを聞くと非常にリアリティを感じられます。
 こうしたエピソードから名前を覚え、その後テレビ出演時の片山氏の話を聞くにつけて私は片山氏を現在も高く評価するように至りました。このブログでも何度も書いていますが、私も鳥取の日本海自動車学校で全く不快感を感じることなく自動車免許を取得し、なおかつ境港出身の水木しげる氏のファンということもあって可能ならば今すぐにでも鳥取に住みたいと考えておりましたが、何も元知事にまで肩入れしなくともと思いますが、せっかくなのでこうして記事にまとめておきました。

4 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 すごい公務員もいるのですね・・・。どうやら、公務員は体たらくばっかりだという認識は間違いのようですね。聞いた話によると、仕事によっては12時間労働することもよくあるそうですし・・・。それにしても、片山善博氏は人を見る目がありますね。

花園祐 さんのコメント...

 これでもし猪瀬氏が有名な作家になれずにいたら片山氏は、恐らくただの人の好い、もしくはだまされやすい公務員として片付けられたと考えると、人を見る目の鋭さがうかがえますね。

 公務員に限るわけじゃありませんが、なんでもかんでもひとくくりで対象を見ると結構判断を誤るケースがこのところ増えています。私の知っている例だと空港の通関や国籍監査の職員などは食事を取る暇もないほど忙しいらしく、公務員だからといって一概に楽できるわけじゃないそうです。

SOFRAN さんのコメント...

鳥取県の中部ダムについては、TBSの報道特集NEXTや昨日のNHKニュース9でも取り上げられてましたね。このニュースをマスコミが取り上げるということは、八ッ場ダムに対する報道姿勢が変化してきたのかなと思います。

花園祐 さんのコメント...

 なんか調べてみたら、この話の元となったのがまさにその鳥取県の中部ダムだったそうです。確かに今回の八ッ場ダムの内容と重なる点も多いので、今になってマスコミが取り上げるのも分かる話ですね。

 っていうか、SOFRANさんならその中部ダムの話も詳しいはずでしょうし、来週までに一本これで記事を書いといてください。