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2010年3月14日日曜日

日中韓東アジア三国志

 昨日に引き続き、このところというかめっきり書かなくなっている私の専門である国際政治についてまた一本記事を投下しておこうと思います。今回投下するネタは私に限らず様々な方がやっている、「日中韓東アジア三国志」についてです。

 物事を何かの構図に当てはめると他人に対して非常に説明がしやすくなるのですが、その一方で取ってつけた構図のバイアスがかかって細部の理解が及ばなかったり、場合によっては余計な誤解を与えたりするので私は極力この様な説明法は避けております。しかし日中韓の政治状況についてはその当事者同士がほとんど理解できていないという事もあるので、今回についてはちょこっとおふざけも兼ねて現代のこの三国を三国志の構図に当てはめながら簡単に解説を行います。

 それではまず日中韓が三国志の魏呉蜀のどれにそれぞれ当てはまるかですが、私の見立てでは以下の通りです。

魏=中国
呉=日本
蜀=韓国


 日本人である私としてもやはり蜀=日本と来てもらいたいものですが、総合的な立ち位置やデータを比べるならこれがやはり適当かと思います。
 それではこの構図からどういった比較ができるか一つ一つポイントを上げて説明してきますが、まず国力の面では人口比がちょうど三国時代とみごとに被ります。如何に比較すると、

中国:約13億4000万人
日本:約1億2000万人
韓国:約4800万人


 見ての通り、日本と韓国を合わせても中国の半分にも届きません。もちろん現代は人口=国力ではありませんが、GDPも去年にはとうとう日本が中国に世界第2位の座を譲り渡し3位に転落し(韓国は15位)、一人当たりGDPで見るならばまだ日中には大きな差がありますが国という単位のデータで見る分には三国志の図式はそのまま当てはまるかと思います。

 では人材面についてはどうか。三国志において蜀の諸葛亮は人材豊富な魏に対して何度も蜀の人材不足を嘆いていましたが、実態的には当時は呉の方が人材不足が深刻だったといわれております。これなんかゲームの三国志をやれば歴然としますが、後半のシナリオにおいて呉は陸遜を除くとまともな人材なんて皆無に近くてゲームを進めるだけでも大変になってきます。史実においてもそのような傾向はあり、呉は孫権の死後だとその後継者争いからただでさえ少ない人材がさらに削り落とされ、晋の侵攻時にはまともな戦いにすらならなかったほどです。なおこれは豆知識ですが、その際の侵攻速度があまりに速かったことから「破竹の勢い」という言葉が生まれています。

 これを現在の日中韓に当てはめると、多少自虐的な見方もありますが今の日本は政界、官界、財界、文化界のどこを見回してもこれだといえる人材がおりません。まだ世界的にも評価の高い人物を挙げるとしたらこの前もフランスからコマンドールをもらった北野武監督にIPS細胞発見の京大の山中伸弥教授くらいなもので、政界に至ってはどうしてこの程度の人間らが選挙に受かるのか疑問に思う政治家ばかりで、財界においても前までちょっと評価していたけど伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長についても未だに公共事業を行えと提言しているる人物が大物として祭り上げられていて、経団連のキャノン御手洗会長なんて言語道断なのまでいる辺り人材不足を感じてしまいます。なんていうか、目先の対策ばかりでグランドデザインが全然この人らからは見えてこないし……。

 では他の二国はどうかということですが、韓国についてはちょっと私も詳しくないのでわかりませんが中国については景気がいいというのもありますが、やはりその人材の底堅さは見ていてうらやましくなるくらいです。特に注目すべきは中国の政治家や官僚たちで、現在の著しく不安定な中国を共産党の強権があるとしてしもその切り盛り振りにはつくづく感心させられます。まだなんどか日本のメディアにて取り上げられた中国官僚のレポートを読みましたが、その分析といい表現といい的確この上ないもので、こんな連中をどうやって相手すりゃいいのかと思わせられたほどの完成度でした。
 ついでにいうと中国は世界各地にチャイナコミュニティを持っており、日本なんかよりも米国などの世論に影響を与える人物も数多くいます。「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」のアイリス・チャンなんて、日本からすれば煙たかったことこの上ないのでしたが。

 ただあんまり中国を誉めるのもなんなのですこしケチをつけておくと、史実の魏国同様に今の中国は反乱によって国がひっくり返される可能性が他の二国と比べてずば抜けて高い国です。先ほども不安定な国事情と書きましたが普通に農民の反乱がこのところ頻発しており、また共産党に不満を持つ軍人も確実に増えてきております。今は景気がいいからみんな従っているものの、なにかで躓いたらえらい事になるのではというのが俗に言う「チャイナリスク」です。

 こうした各国の事情の比較をする上で三国志の構図は割と役に立つのですが、それ以上に日本人に説明する上で一番いいのは、日中韓それぞれの対外関係です。
 史実では魏と蜀が延々といがみ合い、呉はそれに対して日和見的な態度をとっていることが多いのですが、現代の日本人からすると呉であると定義した日本が他の二国と仲が悪く、中には中国と韓国は宗主国関係で仲がいいという意見を述べる方を見受ける事すらあります(主に2ちゃんねるで)。

 しかし実態的には、過去に私も「中国と韓国の仲が悪い件について」の記事で書いたように、明らかに中韓の関係の方が日中、日韓の関係以上に険悪です。私が話を聞く中国人はみんなそろって韓国のことを悪くいい、また韓国の方も政府発表で主に領土問題について中国を批判する事が珍しくありません。この温度差はやはり国境が近いかどうかが影響していると思われ、日本も竹島、東シナ海ガス田問題などそれぞれに領土問題を抱えていますが、それでも中国と韓国ほど険悪なものではないと断言できます。

 ここから少し話を発展させると、日本は中国と韓国、どちらかに肩入れができるという選択権を持っている状態だといえます。韓国と組んで脅威となる中国に対抗するか、中国と組んでひとまずの権益(竹島や対馬ななど)を確保するか、はたまた中韓の関係をよりこじらせるように仕向けるかなど考えれば考えるほど夢が広がります。
 ただ現在においては北朝鮮という、日中韓(+アメリカ)が共同して当たって取り組まねばならない大きな緩衝材があるため、日本は急いで外交方針を決める必要はないでしょう。問題は北朝鮮が崩壊して犬猿の仲の中韓が直に国境が接触し、対立がエスカレートしてからです。その際には周辺勢力のアメリカやロシアの動きを見つつ対応を取らねばならないのですが、日清戦争前みたいな関係になるのかな。

 差し当たって上記の分析から私が今の日本に求める事は、なによりもまず人材問題の解決です。呉はまさに最後の希望ともいえる陸遜の息子の陸抗を司令官職から解任した事が亡国につながりましたが、今の日本でもまだ探せば幾らでも有意の人材がいるにもかかわらず世に出てきません。問題は何かといえば有意な人材が世に出辛いという社会環境で、この社会環境を少しでも改善し、日本に見切りをつけて出て行ってしまうような人材流出を防ぐ事が肝要なのではないかと思います。

 今の日本には中国を遥かに凌ぐ経済環境にインフラ、技術力がありますが、いかんせんそれを生かし切る人材においては不足するって言うレベルじゃねーぞといいたい状況です。何気に今日調べものの作業をしていて知ったのですが、明治維新期に活躍した高杉晋作は27歳で死去しており、伊藤博文は44歳で初代総理大臣に就任しております。
 ちょっと本題と趣旨がずれますが、このところの日本社会を見るにつけ高齢層は幼稚化し、逆に若年層は老成化しすぎなんじゃないかと思います。もっとこの辺のバランスをただす事が、呉=日本の大逆転のシナリオじゃないかと考えるわけです。

2 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

 日、中、韓を三国志に例えるのは面白いですね。確かに日本の人材のなさはまさに、後期の呉のようですね。
 中国は人材が豊かなのですね。しかし、国はそれほど発達していないというのはまるで前期の魏のようです。
 韓国はすべてぱっとしませんね・・・笑。

 人材を中国から輸入しなければいけませんね。それが移民にも繋がってくるのでしょうか?

花園祐 さんのコメント...

 韓国については私があまり詳しくないので記述が少ないだけで、実態はもっとしっかりしているかもしれません。ただ位置的には日本よりハンデがある状況で、それに比べたら日本は恵まれたものです。

 人材を必ずしも中国から移民でとってこいとはいいませんが、中国を遥かにしのぐインフラと水、土地資源、技術を持っていてそれを生かしきれてないのを見ると、やはり使いこなす人材に問題があるのでは無いのかと思います。