昨日友人と会ったら、ダイエー創業者の中内功氏と満州帝国について今調べていると言っていたので、ちょうどこの失われた十年の草稿でコラムを書いていたので、大分連載がのびのびになっているのあるのでここで一気に放出します。
このコラム自体は二年前に執筆したもので、他の草稿については参考にすることはあっても、草稿の文体が常体であるため書き直しであるのだが、敢えてこのコラムについてはそのままカット&ペーストにして紹介してみようと思います。一部見苦しい表現がありますが、気にせずに読んでください。
今となっては産業再生機構からイオンに売却される(提携と言ってあげるべきか)ダイエーだが、かつては小売業界一の売上を誇り、かつて日本の小売形態をすべてひっくり返した企業であった。その先導役となったのが、創業者の中内功である。
彼の企業形態の基本は安売りである。ほかよりも安く、ほかよりも多くという薄利多売方式でこれが高度経済成長時代にはぴったりと当てはまった。また土地本位制ともいう、駅前に店舗を構え、周辺地域の開発が進む事によって跳ね上がる地価を担保に金を借り、また新たな店舗を拡大するという形態で、このやり方によって全国制覇も成し遂げた。しかしこれはほとんどの解説でも触れられているが、消費者の嗜好が量より質へと変化していく事に対応できず、いわゆる「ダイエーには何でもあるが、欲しいものはない」という言葉にまとめられる客層へのニーズ対応の鈍さが最終的に彼の命取りになった。また土地本位制においても、恒久的に地価が上がるなどとというありえない前提の上で行わってきたため、何度も本解説において出てくる不良債権となるのは目に見えていた。
こうした経緯もあり、中内功は80年頃に一時経営を引き下がる事になった。彼が引いた後、かわりに社長になった平山敞によってダイエーは見事なV字回復を遂げ、「失われた十年」の直前のバブル期においてもダイエーは小売業界の王様であった。当時の私は幼稚園くらいだったが、私もこの時期に買い物とくれば親に近くのダイエーによく連れて来られ、それこそ土曜日ともなると家族全員でダイエーに行き、コージーコーナーでアイスを食べ、私と姉がおもちゃ売り場をうろちょろしている間に両親は買い物というパターンまで出来上がってたくらいである。
ここで終わっていれば中内功もそれなりの評価で終わったかもしれない。しかし残念というべきか、彼は自分の息子に社長を継がせようと考え、その後再び自ら社長に就任。そして前社長の取り巻きを追い払い、自らの周りをイエスマンで固めてしまった。その結果、「失われた十年」の間にダイエーは再び失墜する事になる。またこれは後述するが、95年には阪神大震災も起こり、関西拠点のダイエーは大きな痛手を受ける事になった。
こうして2001年、中内功は全面的にダイエーから退任する事となった。しかしウィキペディアの項目上でも「時既に遅し」と書かれているように、傾いたダイエーは再び栄光を取り戻すことなく、後に国家機関の産業再生機構の管理課に入ることになる。余談だが、この産業再生機構自体がダイエーの借金を抱えると国家財政が傾くという危機感から2003年に生まれた機関であり、ある意味本願成就した形となった。
なおこの産業再生機構入りする際も一悶着あり、再生機構はホークス球団の売却を迫ったのだが、当時もオーナーは続けていた中内功は球団保持を最後の最後まで拘泥し、当時はそれほど野球に興味が少なかった私ですらこれには幻滅した。結局、ソフトバンクが買収する事になったのだが、こうしたこだわりが晩節を汚したとしかいいようがない。
そうした球団の売却が行われた翌年の2005年9月、中内功は自宅で死亡する。かつての栄光むなしく、私の目からするとその死の報道は非常に小さな扱いであった気がする。もっとも、この時私は中国に留学中で、北京でNHKしか見ていないからそう思うだけなのかもしれないが、その際に感じた無常観を愚作ながら俳句にしたためて手帳に残してある。
秋風(しゅうふう) 見果てぬ先の 大栄華
その一つ前の日には「中国人はポルノが少ないから過熱しやすいんだと思う」と手帳に書いてある。全然脈絡がないな。
私自身の評価として、やはり後年に経営感覚が時代の変化に合わせられなかった事に尽きる。彼自身、「最近、客が何を欲しがるのかがわからなくなった」と洩らしており自覚していたようではあるが、それならばなおの事引き際をわきまえるべきだった。それにしても、どうにも彼の生涯を見るにつけて筑前守を重ねずにはいられない。
といったところでしょうか。この中内氏に限らず草稿では藤田田氏についても書いており、これなんか私の自慢の愛弟子と話題になるたびに盛り上がる人物なので、こちらもタイミングを狙ってまた紹介します。
2 件のコメント:
満州国の記事もおねがいします!
実は今甘粕誠彦の本を読んでて、うちの親父が買い集めた本もあるから、失われた十年の連載が終わったら次は満州の連載を始めるね。
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