私を知っている人ならすでにご存知でしょうが、私は雑誌「文芸春秋」の愛読者です。この文芸春秋を手にとるきっかけとなったのは私が高校生の頃に特集された、「小泉首相の通信簿」という、各界の評論家たちが当時の小泉元首相に対して項目ごとに評価した値をまとめた記事があり、それを見て面白かったのが今も購読するようになったきっかけとなりました。
そこで今回、暇をもてあましているのもあるので、先日に辞任会見を行った福田首相の業績に対して私個人で十段階評価の通信簿を作成しようと思います。あくまで私の私見なので、参考にする程度でお読みください。
1、決断力 4
本当はもう少し低くてもいいのではないかとも思いましたが、ねじれ国会という不利な状況を加味して4にしました。その根拠は前回の安倍前首相が余りにも決断が遅かったり鈍かったりしたので、そういった比較的な面もあります。まぁ、小泉元首相が歴代の総理大臣の中でも決断力がひときわ高かった方なので、総理大臣平均としては福田首相はこの程度なのではないでしょうか。
2、実行力 2
これは1でもいいとすら思ってます。その根拠は自分が行おうとしている政策目標すらろくに明かさず、最後のほうになって強く主張するようになった消費者庁の創設についても餃子問題を隠していたという事実もあり、具体的に総理在任中に何か新しいものを残したと言うものはほとんどないため、2にすることにしました。
3、党内調整力 7
これなんかは官房長官時代からの福田首相の専売特許ともいえる項目で、やや贔屓も入れて高く7にしてあります。その根拠は福田時代に自民党内の内部抗争や意見を違える議員をしっかり抑えていた点にあります。安部前首相時代なんかは党内にも公然と別意見を主張する人間も出ており、それと比べるなら年の甲と言うものがあるでしょうがひとまずこの点をつけておきます。
4、野党調整力 4
正直ちょっと悩むのがこの項目です。安倍時代よりはマシ、と思いたいのですがガソリン税問題の四月には確か野党に審議拒否をされているし、衆議院議席三分の二による強行採決も安倍時代に負けず劣らずやっているしなぁ。別の意味で民主党の小沢代表と大連立構想をやったと言うことからここのポイントを高く上げてもいいんだけど、それじゃなんか皮肉だしね。
5、公約達成度 1
公約達成とか言いますが、福田首相は具体的にどんな政策を実現するかなどの国民への約束はほぼ何もしていないでしょう。にも関わらずこの項目を1に据えたのは、ガソリン税問題の件があるからです。福田首相はガソリン税を一般財源化して環境保全などの費用に使うと今年に発表しましたが、今のところ全くその用途の目途はついておらず、結局費用の付け替えだけ行われ、不明確な支出が続くことが現状では予想されます。また先に言及した消費者庁構想も結局大臣に据えた野田聖子を冷やかしただけに終わり、全く実現に向けて動かしていません。私は野田聖子が大嫌いですが、餃子問題を隠されていたなど、この件では深く同情します。
6、外交 1
ちょっとこの外交面では厳しくつけさせてもらいました。と言うのも、欧米との外交ではこれと言って目立った活躍はなかったものの、中国との間では劇的に福田首相は関係を回復させています。しかし、これは日本側の努力というよりも、「靖国にさえ触れなければ後は何とかする」という、中国側の努力の結果で、別に福田首相じゃなくとも小泉元首相じゃなければ誰でも達成できたことだと私は思っています。まぁこの背景には五輪前に揉め事を作りたくない中国の内部事情もありますが。
さらに言うと、中国のチベット問題を大きく取り上げなかったり、アメリカが北朝鮮にテロ支援国指定解除を行おうとするのを引き止めようとしなかったり(結局北朝鮮は核研究を今日再開したようだから、あの時アメリカを引き止めておけば今の世界の日本を見る目が大きく違っていたと思う)、外交的不作為が非常に目立ちます。総裁選の際は拉致問題を自分の代で解決して見せるとか抜かしてたくせに。
7、経済政策 3
これは原油高騰などの不可抗力もありますが、悪化していく経済環境に対して何の対策も打ち出さなかったというのを考慮した上での点数です。それこそ今公明党が主張している減税や、ガソリンの暫定税率に対して税率を緩めるなどいろいろ取れる対策があったと思えるのですが、見事なくらいにノータッチでした。
そして何より、姉歯事件によってめちゃくちゃにされた建設行政に対しても素早い対応が取れず、今ばたばたと建設業界の会社が倒産しています。中には自業自得なところもありますが、この問題に対してどう対応するかという討論を、私は一切聞いたことがありません。公共事業を復活させるのは以ってのほかだけど。
8、行政改革 1
これははっきりと最低点をつけさせてもらいます。明らかに無駄な支出を食っている「私のしごと館」といった官僚の無駄な天下り先やタクシー券問題に対して、一貫して福田首相は官僚を守る側に立っていました。挙句の果てにはこの公務員改革を行ってきた渡辺喜美元行革大臣を更迭するなど、国民のニーズと逆行するこの人事にはほとほとあきれました。私個人的な見方ですが、ほかのことはやらずにこうした行政改革だけをやっていれば十分に支持率は回復でき、選挙でも戦えたと思います。
以上、様々な点について得点評価を行ってきました。全体的に悪口が多かったので最後に評価すべき事例をいくつか紹介すると、まず「C型肝炎問題」に一区切りをつけたのは評価できます。しかしこれも、小泉元首相の「ハンセン病訴訟」と比べると世論や桝添厚生大臣に押されたという形で、福田首相が率先したものではないので敢えて実行力の項目には入れませんでした。
全体的に言うと、福田首相の評価は以前に菅直人氏が述べていたように、
「小泉時代のように脇に立って補佐する立場だと手ごわいが、表に立ってくるとそうでもない」
という評価の通りの人物だったと思います。自分の分をわきまえ、首相にはなるべき人材ではなかったと言うのが私の評価であります。
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