・ロンドンの甃 「首相11号」の辞任(MSNニュース)
リンクに貼ったニュースによると、英紙「フィナンシャルタイムズ」では日本の首相はころころと変わることから、唯一任期の長かった小泉元首相を除いて90年以後からは番号で呼ばれていたようで、今回の福田首相辞任劇も福田首相のことを「首相11号」と呼んで、
「鳥だ! 飛行機だ! いや、奈落に落ちていくのは日本の首相だ!」
という風に書かれたそうです。表現的に非常にうまいですし、いい意味で政治風刺になっていると思います。こうした政治風刺表現は昔はそうでもなかったのですが、今じゃ日本にはまともなジャーナリストはいないのか、こうしたシニカルで面白みのある政治風刺はほとんど見られなくなりました。
今回の辞任劇でも、辞任会見の際に福田氏が言った「あなたとは違うんです」という、中国新聞記者の質問に対して言った言葉が評判になってますが、これは言葉自体がネタにされているだけで別にジャーナリストが自ら作った表現でもなく、現段階で今回の辞任劇を言い表すうまい表現というものは未だに出てきておりません。
さてそんな風に政治風刺のことを考えていた時、突然ちょうど一年前の出来事を思い出しました。その一年前の出来事というのも、安倍前首相の辞任劇です。
今回の福田首相同様に臨時国会の開会直前の突然の辞任劇に当時もマスコミはあれこれ安倍氏(どうでもいいけど、テレビで見てて毎回「あべし」と、北斗の拳っぽく聞こえていたが誰も突っ込まなかったなぁ)を非難する報道ばかりで、最初に紹介したような思わずうならせるような政治風刺表現はあまり見受けられませんでした。
しかしそんな中、唯一ある全国紙の新聞が冒険をしてきました。何を隠そう、朝日新聞です。
「近頃OLたちの間で、『アベする』という言葉が流行っている」
とか言うような書き出しだったかな。
一年前、朝日新聞は自紙の社説にて、突然予定をキャンセルする、責任を果たさないということを安倍前首相の突然の辞任劇に喩えて「アベする」という言葉が出来、この言葉がこのところあちこちで流行っているという社説を書いてきました。
もちろん私個人の実感でもこんな「アベする」という言葉は一度も聞いたことがなく、お世辞にも流行っているとはとても言えない状況で、まず間違いなくこの社説を書いた人が自分が作った表現を大げさに書いたに過ぎないものでした。しかし朝日新聞に対して反感の強い「2ちゃんねる」などではこの社説が出るや、やれ捏造癖が出ただの、いやらしい表現だの、果てには今年のネット流行語は捏造を行うという意味の「アサヒる」だとあれこれ騒ぎになりました。
私としては確かに表現に行き過ぎはあったものの、朝日新聞は他のジャーナリストが安倍首相の辞任劇を風刺する表現を一切行わない中で唯一挑戦してきたので、その点を考えると、表現に挑戦してこなかった他紙よりはずっと立派だと思う……一方で、確かにくだらない表現だなぁとも思っちゃいます。まぁ頑張ったけど努力が足らなかったんだねというような評価です。
しかしこの問題は、その後何故だか場外乱闘にまで発展する事態になっていきます。
私が憎んでやまず、毎夜北斗七星に向かって呪いを送り続ける中日新聞がこちらも社説にて、
「いや、朝日の言うとおり確かに『アベする』という言葉は流行っているぞ」
とか言い出してきました。こちらも2ちゃんねるの方々から嫌われているだけあって、こんなこと言い出してまたあれこれ叩かれました。はっきり言って私も、だったらきちんとRODでもいいから統計調査した結果を出してみろよとか思いましたよ。朝日は行き過ぎがありましたがあくまで事態を表現しているのにとどまっているのに対して、中日は主観で分けのわからないことを言い出してきた辺り、余計始末に置けない気がします。ほんと、この新聞社は早く潰れてくれないかな。今日もまた呪おう。
さて、何故私がこんなことを今日になって思い出したのかというと、今の状況こそまさに、朝日新聞の言う「アベする」という状況なんじゃないかなぁ、と思ったからです。首相の突然の責任放棄による辞任、状況から主役まで全く一緒なんですし、せっかく作った表現なんだから朝日新聞も再利用して、
「去年に引き続き、OLたちの間で『アベする』という言葉が流行っている」
という風にまた社説を書いてきたら、捏造とはいえその熱意だけは認めてもいいのではと思いました。しかし一応やめるのは福田首相なのですから、
「去年の『アベする』に引き続き、OLたちの間で今年は『フクダる』という言葉が流行っている」
という風にでもなるのでしょうか。にしても、OLばっかじゃなくてたまにはOG(オフィスジェントルマン)の間で流行ってもいい気がします。それと、「フクダる」と書くとなんとなく、「突然キャンセルする」という意味より、「オランウータンに似てくる」というような意味合いに聞こえてきそうです。もしくは、「あなたとは違うんです」と、自分を客観的に見られる人間になってきたというような意味合いでしょうか。どっちにしろ、こんな言葉が流行ることは永遠にありえないでしょう。
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