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2008年9月29日月曜日

アメリカの金融不安と日本のメガバンクについて

 本日友人からリクエストをもらったので、この前のリーマンブラザーズ社破綻以降続いている世界的な金融不安とそれに対する日本のメガバンクについて手持ちの情報と解説をやろうと思います。

 先ほどのNHKのニュースによると、何でもベルギーの銀行が信用不安から取り付け騒ぎに生じかねないとのことでベルギー政府が公的資金の注入を発表したようなのですが、このベルギーの信用不安も明らかにアメリカの金融不安が原因です。このアメリカの金融不安についてアメリカ嫌いの経済学者などは去年辺りからいつかボロが出るなどと警鐘を鳴らし続けていましたが、連中は今のようになったらかつての大恐慌のような世界的経済混乱が起こると予想していましたが、結論から言って現時点でもその可能性は非常に高いと思います。

 なぜならアメリカの通貨がドルだからです。基本的に貿易の世界ではドル決済といって、商品の売買はドルでお互いに支払った後に自国通貨に換えます。何故これがドルなのかというと、それはやはり安定しているのが理由です。たとえば昨日まで1ゴールド=100円だったのが次の日には1ゴールド=500円になったりすると、日本人で前日に500ゴールドで商品を買うと約束していた人は5000円で済む支払いが25000円にまで膨れ上がってしまいます。貿易というのは輸送や送金に時間がかかるためこうしたリスクを常に計算しなければなりませんが、この変動が小さければ小さいほど貿易の人間にとっては取引が安全ということで、これまで決済通貨にドルが使われてきました。

 その結果、ドルは世界中でばら撒かれ基軸通貨としての地位を得ましたが、今回のこの金融不安で急激に変動が起きた場合、たとえば銀行のローンだと毎年1000ドル返済する予定がドルの価値がその国の通貨で三分の二に落ちてしまった場合、単純に収入も三分の二に落ち込んでしまいます。このようなことが今後世界中で起こることが予想されるので、まぁ確かにかつての大恐慌のようなことになるというのもうなずけます。

 それに対して我らが日本の銀行はどうなのでしょうか。実を言うと、今の状況は日本の銀行にとっては願ったり叶ったりの状況であると私は考えています。
 というのも日本は私も以前にくどいくらい「竹中平蔵の功罪」の記事の中で解説しましたが、竹中平蔵氏が指揮した小泉改革の中で徹底的に不良債権を洗い出して自己資本比率、要するに自由に使える銀行自身の手持ちのお金を可能な限り貯めさせたのもあって、恐らく他国と比べて今回の金融不安で受ける損失は著しく低いと考えられます。また自己資本比率が多いということは、今回の混乱で他国の銀行が損失の補填やら運転資金やらに回すのに手持ち金が不足するような事態に陥っているのに対して新たな投資を行えるくらい余裕があるということを表しています。

 その結果の証拠というか、先週末に経済紙の一面を騒がせましたが三井住友銀行の米証券会社一のゴールドマンサックスへの出資と、野村証券のリーマンブラザーズのアジア部門買収がありました。これは運転資金にすら困る連中に対して、いかに邦銀が資金に余裕があるのを見せ付けた事件でした。
 かつて日本が不況だった折には散々公的資金を投入して立ち直らせた新生銀行があっさりとアメリカの投資家たちに買われていったのときれいに逆転し、今度は日本の銀行がアメリカの会社を買うようになったなんて、不謹慎ですがすこし小気味よく感じます。たとえるなら、散々四番バッターを奪っていった阪神に広島がありえないくらい勝ち越すような気分です。

 かといって、日本の銀行を私は手放しで賞賛するつもりはありません。なぜなら彼らがそれだけの資金を持っているのにはやはり悪いことをしているからです。その悪いことというのも、ずばり金利です。
 通常、個人が銀行に預金をしているとその額に対して利子がついて増えていきます。しかし日本はかつての不況以来延々と0金利政策を日本銀行が取っているため、普通の銀行である民間銀行も延々と金利を据え置いて、確か利率1%をまだ切っているんじゃなかったでしたっけ。

 本来、銀行は個人から預かるお金に応じて利子を払わねばならないので、その分企業などにお金を貸して自分らで利子を取ってお金を増やすという資金運転をしなければなりません。しかし今の0金利政策下だと人からお金を借りても払う利子が極端に少ないので、別に無理して企業にお金を貸す必要もありません。

 その結果起きたのが、私の見たところあまり経済誌なども取り上げておらず、唯一私と私の親父だけが道頓堀に飛び込まんばかりに怒っている銀行の貸し渋りです。かつての貸し渋りは資金の余裕のなさから起こったものですが、今は資金に余裕があるばかりか、どの銀行も過去最高利益を更新し続けるほど儲けているのに企業への資金の貸付を顕著に減らしています。これは支払う利子が少ないために資金を溜め込むリスクが少ないため、確実に利息が返ってくる優良企業にのみ商売をやって、中小企業を相手にしなくなったというのが問題の構造でしょう。その結果何が起きたかというと、うちの親父曰くアーバンコーポレーションや創建といった、そこそこ名のある企業の破綻です。特にアーバンなんて経営上うまくいっているのに運転資金が足りずの破綻、つまり黒字破綻です。

 本当に皮肉な話ですが、今日本で最も資金の流通を妨げているのは間違いなく銀行でしょう。新規の産業には一切金を出さないどころか、個人への利子も全く払おうとしません。確か去年の記事ですが、この銀行の不作為によって日本人が失った本来受け取るべき利子は数兆円にも上ると分析されています。

 今、邦銀はそのようにして貯めたお金を使って弱っているアメリカの金融機関などの買収に乗り出していますが、別に買収が悪いことだと言うつもりはありませんが、それより先にもっとやるべきこと、金利の引き上げと企業への貸付の増加があると私は思います。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 経済のことは、よくわからないことがあるので解説してもらえると非常に勉強になります。銀行が一人歩きしていて、他の企業がつぶれているみたいなので、中小企業のためにも何とかしてほしいですね。中小企業はやっていくのが大変だと聞いたことがありますので。

花園祐 さんのコメント...

 自分もそうでしたが、基本的に経済学は専門的な教育は何一つ受けてこず、世の中に出回る経済問題などの解説や評価を実例にとって今まで勉強してきました。それでも今だったらそこらへんの経済学部の学生なんかよりこういった物事を理解している自信がもてるほど知識は身につきました。

 サカタさんもちょうど今の時期はあれこれ動いていて面白いから、よく出回る経済情報を観察し、間違っててもいいから自分で考えてみてください。なにか考えるきっかけとなる情報がほしいならリクエストしてくれればいつでも私が紹介します。

 あとどうでもいいけど、この前フロントミッションしてたら「サカタ」が速攻でミサイル食らってやられました。